岩波版『大衆の反逆』アマゾン・カスタマーレビュー


parole
これは文化遺産だ
2020年11月15日

佐々木孝さんの訳は本当に素晴らしい。これまで別の人が訳したもので何度も挫折した経験が嘘のように読み込めました。ただ内容は歯応え十分です(第一次世界大戦後のヨーロッパの社会状況が現代日本の状況にも似ていると思いました)。
「訳者あとがきに代えて」もぜひ読んでください。佐々木さんのご子息が、亡くなった訳者に代わりに書いています。佐々木さんは、東京の大学教員を辞し、故郷・福島県に移り、妻を看病しながら、翻訳を進め、10数年かけて訳文を完成させ、亡くなる前にご子息に託したのです。私は学者の強い意志と責任感があったと受け止めました。正直、感動し、涙腺が緩みました。この本の出版を見ることができなかった佐々木さんでしたが、素晴らしい文化遺産を残してくれました。感謝。


akio
自分の生き様を改めて問われている
2020年10月13日

今年に入って読んだ本の中では圧倒的な読書体験でした。言い回しが独特でところどころ何を意味しているのかうまく咀嚼できませんでしたが、自分が立っている世界の有り様を俯瞰する強烈な視点を感じるし、改めて自分の生き様が足元から問われた気がしています。少し時間を置いて要再読。


五島弘二
岩波でオルテガを取り上げたのは最高です。
2020年10月4日

エピローグが読めたことは最高でした。佐々木さんの訳はわかりやすいです。

秋元秀俊
忍び寄る全体主義
2020年7月14日

若い頃に読んだ(中途でうち捨てたに違いない)記憶とは、まったく違って、つまり大衆を高楼から見下ろしただけという印象とはまるで違って、ロシアとドイツ、そしてスペイン、ヨーロッパに忍び寄る全体主義の空気を深い悲しみをもって指弾した書だということがよく分かる。改めて、デモクラシーというものを考えさせられる。


Amazon カスタマー
ことばのマシンガン
2020年7月11日

さまざま語彙から放たれるマシンガンを見ているかのようである。筆者の批判的に指摘することや分析などは興味深い。
「みんな同じ」からの脱却は何を示唆するのか。結局は人間の集まりが文化にどんな影響を与えるということか?
解決策や方向性は次号に期待?!


ジョバンニの切符
大衆としての覚醒
2020年6月24日

訳者あとがきに代えて より P-408
「自らの師の神吉敬三先生を含む偉大な先達による既訳がいくつもある中で、父はこの名著を新訳で世に問う必要性を強く感じていました。内外を問わず、ともすればこの作品が曲解、あるいは拡大解釈されてきた傾向に一石を投じたい。
オルテガがこの作品に込めたものは何だったのか。大衆、すなわち私たち一人ひとりが覚醒し、慎み深い自己沈潜において新たにまっとうに歩み始めること、それがオルテガの祈りだったのではないか。」
この本はよく訳がこなれています。直接オルテガ先生の日本語による講義を聞いているようです。
内容で特に感動したのが第一部でした。
現代人=大衆とはどうゆう特徴があるのか?
大衆は何を考えているのか?
何が欠けていて、何が必要なのか?
どうすれば此の大衆的思考法から脱却できるのか?
が明示されています。
また、現代では一般的にエリートと思われている人たちが、実は大衆の代表なのだと気づかされたりして、とてもスリリングな書物になっています。
自分が大衆なのだと自覚することの重要性を教えてくれます。


木村洋平
「わたしだけは選良(エリート)である」という思い上がりへの「反逆」を示す新訳
2020年5月12日

佐々木孝さんの新訳、ちょっと感動します。
中公クラシックスでは、「大衆は愚かだが、わたしたち思想エリートは少しでも気高く生きよう」という読後感ですが、岩波は「わたしたちはみな大衆だが、自らを鍛え上げて高貴な精神は目指せる」という印象です。
すなわち、他者をあれこれ非難することが眼目なのではなく、時代精神に抗う気概を持って「自分が」いかに生きるか、自己陶冶を続けられるかが課題だという、生の哲学が示されています。
この点については、故人となった訳者の代わりに書かれたあとがきにも、「慎み深い自己沈潜」「オルテガの祈り」といった言葉で言及されており、また、宇野重規氏による解説も、その方向で書かれています。
あとがきと解説が両方つく、というのは岩波文庫ではめずらしいのではないでしょうか。今回は、これらがあることでより良質な本となっていると感じます。
佐々木孝さんはスペイン哲学者のウナムーノ研究、またオルテガのさまざまな著作を訳しており、死の前に遺稿としてこの訳を我が子に託しました。最後の年月は、相馬市で妻の介護に当たりながら、研究を続けていたとのことです。訳者の情熱が静かな、彫琢された文章としてこの本にこめられていますね。
50頁ほどある「フランス人のためのプロローグ」訳出も貴重です。オルテガが、自著について、またヨーロッパについて、語りたいように語っている文章で、本文が抑制がずいぶんきいているのに対して、ここは本音が強く見えるかのようです。その語り口に魅せられます。「イギリス人のためのエピローグ」もよいですが、こちらは短めですね。
素晴らしい新訳、偉業と思います。


takuunn
『大衆の愚昧さ』をあぶり出す名著
2020年5月9日

オルテガは母国スペインから逃亡した。当時、同国は内乱状態、右翼左翼の声勇しく、群衆が政治の表舞台に踊り出ていた。ヨーロッパ中にファシズムの嵐が吹き溢れ情勢不安。行き過ぎた民主主義の勃興だ。行き過ぎた民主主義=超デモクラシーの主体は、まさに強いモノに迎合する群衆たちである。その群衆心理とは『みんなと同じがいい』と感じ、それを快く思う、平均的人間そのものの姿だ。その平均人の塊である、没個性的な大衆が、あらゆる社会的、政治的権力の座に乗し上がり、強力なリーダーを希求する。それがスターリン元帥であり、ムッソリーニ将軍であり、ヒットラー提督であった。彼らこそが大衆が待ち望み、大衆の気分を晴らしてくれる素晴らしきリーダーかな!と最初は思った。そして、その結果は言わずもがな。彼らリーダーに任せた結果は、超が付く監視社会、ギスギスし合った市民同士の罵り合い、分断していく個人たち。不安、不安、不安、そして強き者に群がり弱き者を見殺し、締め出し、排除する。群衆心理の『常識』から外れた者を攻撃し、その彼ら彼女らを暴言で脅し、群がり、暴力に貪りつく野次馬大衆たち。それはまさに『大衆の反逆』として噴き出し、我々一人一人に暴力的に跳ね返ってくるという事態。なぜこの著者であるオルテガは逃亡せざるを得なかったのだろうか。その理由が少しでも理解できる書物である。これは痛烈な大衆批判の書であり、現代こそ読まれるべき価値のあるものである。新訳としてこの書は読みやすく、大変気にいっている。ただ想像力がないと読めないと思われる。
追記:NHK『100分で名著』、オルテガの回を観てみるのをお勧めします。


S-00999
凡庸であることを権利として主張する輩
2020年4月21日

オルテガが言う、「凡庸であることを権利として主張する輩」は、正に今、安心安全保証に成り下がり、やるべき使命を置き去りにしている現状そのものだ。その中で先日の刊行はオルテガと一体の魂を持つ訳者佐々木孝、「大衆の反逆」を世に送りだした方々の命がけで貫く魂の警世である。”訳者あとがきに代えて”で知った経緯に涙が止まらない。我々の置かれている真の現状を知らなければ、右往左往するばかり。宗教や認識についてあらゆる能力を失ってしまっている事など本書に描かれているのはヨーロッパだか、我国も同じ。国家、国境、挨拶etcキーワードから多くの思い当たる節を見つけ出し自分で考え自分で行動しなければ、恐怖に覆われて自滅するだけである。
わたしがこの本に出会えたのも命がけで貫き通してしる方々のお陰であって自分ではない。日々の心がけだけが物を言い、何事も自覚がなければそこで終わりだ。個々の独立した生に目覚める為の「大衆の反逆」。
神吉敬三訳も良かったが佐々木孝訳は躍動していてわたしは好きだ。