現在スペイン大使館を会場に開催中の「いま、ウナムーノを問う」展、いよいよ今日と明日が最後になりました。今回の展示会の実質的立案者でありその推進役を果たしてきた戸嶋靖昌記念館の執行草舟さん、そしてその学芸員の安倍三﨑さんから入った情報によれば、昨日までの来館者が累計何と2,300人ということです。
私自身は訪れることはできませんでしたが、本ブログの友人たちやかつての教え子たちが相次いで訪れたことは知ってました。もちろんそれは微々たる人数、だから最終的には1,000人になれば大成功と予想していました。それがその何倍もの来館者に恵まれたのです。
今日は祝日、そして明日が最終日、この二日間でさらに大勢の人が訪れるでしょうが、これを読まれる東京近辺の皆さん、もしまだ行かれてなかったら、最後のお誘いです、ぜひお友達を誘ってスペイン大使館を訪れてください。この日本でウナムーノの本国スペイン・サラマンカ大学での先行展示会の参観者を超える人数が訪れたとなれば、実に画期的な出来事になります。私の個人的な思いは、もちろんこのスペインの哲人の思想がこの極東日本で認知され再評価され、そして根付くことですが、同時にそれが原発禍の中でなおも迷走を続ける日本への厳しい警鐘でもあることを確信しています。
※ 10月8日午後6時。いま安倍さんから新たな報告がありました。つまり本日は300人以上の来館者があり、これで累計2,700人を超えてサラマンカ大学での来館者総数を超えたそうです。明日はさらに記録を伸ばすことでしょう。もちろん数そのものに喜んでいるわけではなく、この日本にも経済的・物的価値に飽き足らず心的・精神的価値を希求する人が多数存在することの現れで、実に大きな勇気が与えられるということです。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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机上にいつも置いて少しずつ読み続けている『ウナムーノ著作集3 生の悲劇的感情』の先生が訳された「第Ⅸ章 信・望・愛」の中で、ウナムーノはこう言っています。
「真の愛は苦しみの中にしかない。そしてこの世において、苦しみである愛を選ぶか、あるいは幸福を選ぶしかないのである。愛はわれわれを他のどこにでもなく、まさに愛そのものの幸福に導く。それは不確かな希望の、悲劇的な慰めである。愛が幸福なものとなり、自己に満足してしまうその瞬間から、もはや欲求することがなく、もはや愛でなくなる。満足せる人、幸福な人は愛することがない。彼らは無化と五十歩百歩の習慣の中にまどろんでしまう。慣れる(習慣化する)ことは、すでにして存在しないことの始まりである。人間は苦しみに対する能力を持てば持つほど、あるいはさらに正確に言うなら、より一層苦悩に対する能力を持つとき、それだけ一層人間に、つまり、より一層神的なものになる。」
戸嶋氏の作品は、苦難の人生によって産み出された「愛」が作品の中に宿っているのを私は感じました。それはまた、ウナムーノの思想が厳然と生きているからなんでしょう。「真の愛は苦しみの中にしかない。」。戸嶋氏が生涯をかけて私たちに伝えたかったことのように私は思います。