嗚呼、森本哲郎さんも!

 実は先日、高田宏さんの追悼文めいたものを書いたあと、じゃあの人は? ともう一人気になる方のことを思い出した。森本哲郎さんである。急いでネットで検索してみると、残念・無念! 森本さんも亡くなられていた、しかも昨年一月に! 産経の死亡記事を以下にコピーする。

「評論家の森本哲郎氏が死去 88歳 元朝日新聞記者
 森本哲郎氏(もりもと・てつろう=評論家)5日、虚血性心不全のため死去、88歳。葬儀・告別式は10日、近親者のみで行った。喪主は長男、進(すすむ)さん。
 朝日新聞記者として取材で訪れたアフリカの砂漠にひかれ、「サハラ幻想行」「文明の旅」などの単行本にまとめた。昭和63年から平成4年まで東京女子大教授。昭和55年にはテレビの情報番組のキャスターを務めた。フリーアナウンサー、森本毅郎(たけろう)さんは実弟。」

 氏とは清泉女子大時代、学生のために講演をお願いしたときからのお付き合いだった。その日、赤いスポーツカー仕立ての車でおいでになり、書かれたものから予想していた硬骨漢とは違った側面もお持ちなのかな、と思ったが、しかしあれは借りた車でね、との言い訳をあとで聞いたような気もする。ともあれ、以後スペイン、主にオルテガのことなどで親しくお付き合いいただいた。静岡の常葉学園大に移ってからも、学生たちが催した「スペインの夕べ」で講演していただいたり、原町に移り住んだあとも時おり出される著書を送っていただいたりしていたが、震災後はこちらからも連絡しないまま音信が途絶えて気になっていた。

 今調べてみると、貞房文庫に私自身が購入したものを含めて森本さんのご本が42冊にもなっていた。震災後に出された『老いを生き抜く』(NTT出版、2012年)はたしかネットで見つけて買ったものだが、森本さんもそういうお歳になったのか、とある種寂しい気持になったこともあった。2005年に出た『我輩も猫である』(清流出版)は、高田宏さんの『我輩は猫でもある』と不思議な共鳴音を発しているようで、そのうち読み比べてみよう。

 ともかく文明批評家として長らく第一線で活躍された方であるが、父上が漢学者であられたこともあって、氏の書かれるものは実に格調の高い日本語だった。エグゼクティブ・クラスの愛読者が多いというのもうべなるかな、である。サハラはもとより世界各地への旅行家・紀行文作家としても多くの魅力的な著作をものされたが、スペインについて書かれたものも実に的確な分明批評となっていて感銘深い。

 原発問題やキナ臭くなってきた世界状勢について氏からもっとお聞きしたかったけれど、氏の書かれた著作を改めて読み返すことでこれからも対話を続けることにしよう。
 ともあれ、遅ればせながら氏のご冥福を心から祈願したい。

 というようなわけで、このところ三回続けて追悼の文章を書いたわけだが、要するに私自身もそういう歳に近づいてきたのだということであろう。早晩私自身にも訪れる死をあわてずゆっくり準備することにしよう。

 思わせぶりにギャートルズの予告をしたきり後に続けないで申し訳ないが、実は高野澄という人が書いた『安藤昌益とギャートルズ』(舞字社、1996年)を読んでいる最中で、ギャートルズがなぜ安藤昌益理解のための狂言回しの役を演じているか、について書こうとしていたのだが、正直言うと、まだ考えがまとまっていない。予告した以上、近日中に必ずご報告しますので、今しばらくのご猶予を。

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佐々木 孝

佐々木 孝 について

佐々木孝(ささき・たかし) 1939年北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。1962年同学科卒業。5年間の修練生活の後、1967年イエズス会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授、1982年教授となる。1984年常葉学園大学でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、東京外国語大学、駒沢大学、法政大学、早稲田大学などでも非常勤講師を務める。2002年定年を前に退職、病身の妻を伴って父祖の地・相馬(福島県南相馬市)に転居。以後16年にわたり「モノディアロゴス(Monodiálogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」と題したブログを死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。2018年12月20日、小細胞肺がんのため宮城県立がんセンターにて死去(享年79)。
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