大切な作家たち

このところ立て続けにインターネットの古本屋さんから本が届いている。五月から隣町の「埴谷・島尾記念文学館」で始まる予定の「埴谷雄高を読む会(仮題)」の準備をしなければ、と思い、埴谷さんのまだ読んでない本を注文し始めたのがきっかけで、次は安岡章太郎さん、小川国夫さんの、まだ読んでいないか持っていない本をネットで次々見つけては注文したからだ。
 八王子の家だったら、置き場所のことを考えて購入を控えたと思うが、なにこのボロ屋は空間だけはたっぷりある。あとは財力だが、これも有難いことに、ネット古本屋で意外と安価な掘り出し物を見つけることができる。昨日届いた河出書房新社の「埴谷雄高作品集」全七巻などはたしか二千九百円だった。
 埴谷さんはもうアンドロメダ星雲の彼方の死霊の世界に住んでおられるが、安岡さんも小川さんも、まだお元気に仕事をしておられる。お二人ともこれまでいろいろな局面でお世話になった大先輩なのに、このところご無沙汰ばかりで、しかもあまり読まなくなっていた。
 ともかく安岡さんは小説家としても第一級のお仕事をされているが、さりげない題材のエッセイも、いつ読んでもその文章の素晴らしさに感動する。今は岩波版作品集の第1、2、3巻の初期作品のうちまだ読んでいなかったものを読んでいるが、若いときからすでにきっちりした見事な文章を自在に駆使していることに改めて感動している。
 小川さんの文章も長い間読み直していなかったのだが、先日、地中海の旅の思い出を書いた作品を読んでいて、地中海の光や風や深緑の海の色までが見えてきたのには正直びっくりした。不覚にも涙が出そうになった。

佐々木 孝 について

日本のスペイン思想研究者。1939年北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。6年間の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で「モノディアロゴス(Monodiálogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」と題したブログを死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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