『モノディアロゴスⅢ』の読み方二つ

ふだんは年賀状ぐらいでしか交流のない方々と、2年に一度(いやほぼ毎年か)私家本発行を機会に交流が深まるのは、実に嬉しいことである。ただ心配なのは、書く方は何とかがんばれるとしても、製本する体力がいつまで続くか、である。妻が元気だったら喜んで手伝ってくれたのに、と残念な思いがするが、これだけは仕方がない。
 さて将来に対するいらぬ心配はこの辺にして、今日受け取った二つのお手紙を紹介したい。最初のものは、かつて大学院で教えたことのあるF君からのもので、中にこう書かれている。「一息に読むのが惜しく、毎日少しずつページを繰りました。ウェブ版のように日替わりで読むのに何か良い方法はないかと思案、はたと思いつきました。尾籠な話で恐縮ですが、“はばかりで読む”、つまり自然の呼びかけにまかせ、お呼びがかかるや『モノディアロゴスⅢ』を掴んではばかりに駆け込むという寸法です。失礼とは存じますが、おかげさまで楽しい雪隠生活でした。若くして他界した母方の祖母が雪隠を “ご不浄” と読んでいたことも久しぶりに思い出しました」。
 雪隠でお役に立てるとは思いもしなかったが、しかし煎じ詰めれば “人生の応援歌” のつもりで書いたものであるから、すっきり生きるためのお手伝いができて、著者として全く文句ないどころか、生活のリズムがどこか “詰まった” 感じをお持ちの方にぜひお勧めしたい読み方である。
 もう一通は、スペイン語学界の大御所H先生からの便箋9枚にも及ぶお便りである。まずは大学者らしく『モノディアロゴスⅢ』の内容を8つの柱に分類しておられる。いちいちページ・ナンバーが書かれているが、煩瑣にわたるので、ただ件数だけにする。

  1. 家族愛・親族愛…48
  2. 翻訳論…4
  3. スペイン語…3
  4. 名士とのつき合い…31
  5. 懐旧…3
  6. オルテーガ・イ・ガセー…8
  7. 時局批判…6
  8. 読書…2
  9. 文学論…15
  10. 宗教…3
  11. ウナムーノ…2
  12. その他…15

 恐れ入谷(いりや)の鬼子母神(きしもじん)です。これによると、私はよほど家族愛の横溢する人間のようで、自分でもびっくりします。先生によれば、このうちもっとも好きなものは時局批判だそうです。ともかくこのようにじっくり読んでくださる方がいるという事実は作者冥利に尽きます。
 最後に目次にあるミスまで指摘してくださいました。せっかくですので、それもここに写してみます。

「旅の気分」「ウメさんの4回忌」の次は「旧に倍する元気さ」ではなく「薄暮の中で」P.8です。
「ハイカラ村長さん」はp.22ではなくp.20です。
「福浦小学校校歌」p.20ではなくp.22です。
「不美人の自覚と矜持」はp.150ではなく、p.133です。

 ありがたいチェックです。さっそく今晩訂正します。これまですでに『モノディアロゴスⅢ』をお持ちの方は、ご面倒でも訂正かたお願いいたします。

佐々木 孝 について

日本のスペイン思想研究者。1939年北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。6年間の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で「モノディアロゴス(Monodiálogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」と題したブログを死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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