正福院
古代の魂が見える
平素、スペインにはほとんど縁はない。まして、ミゲル・デ・ウナムーノという人物については全く知らなかった。でもこの本を人に薦められて読んでみたが、すごかった。
「死に対して準備のできた魂」スペインて根本的にかっこいい!!現代でも近代でもなく、それを拒む古代の魂。それをあくまでも生涯をかけて探究するウナムーノの戦い。こんな人がいたのですね。すごい惹きつけられた。ウナムーノの本、全冊網羅しようと思った!!
のむさん
スペインの思想家ウナムーノ氏
2018年6月4日
東日本大震災の折、原発25kmのご自宅は避難指定されたが、あえてご家族共々避難されずに過ごされ、当時の大きな混乱を原発に対する鋭いご意見とともに克明に描かれていた著者佐々木孝氏の御宅を訪問しじっくりとお話を聞かせていただいた。
その際、受けた感動の根底には本書の対象であるスペインの哲学者ウナムーノ氏の思想があることが実感できた。
海
青春時代の思い出の書、復活に涙
2018年2月8日
若い頃、スペイン哲学に傾倒していた。
佐々木孝のこの本は新書版で読んだが、
生々しいウナムーノの姿を感じさせてくれ、
表紙が取れるほど何度も読み返した。
それがハードカバーで、しかもあの法政大学出版から出ており
本当に嬉しく、ありがたく思う。
ニャンコ
したたかなエゴセントリズム
2018年4月17日
「ミゲル・デ・ウナムーノ」このあまり聞いたことのないスペインの哲学者(サラマンカ大学総長)の本は、言葉に釘付けになる。
ウナムーノの姿勢は、スペイン神秘思想の伝統に立脚している。スペイン神秘思想のなかには、したたかな自己中心主義(エゴセントリズム≠エゴイズムではない)が見られる。エゴセントリズムがなければ、真実は見えないのではないか。おもしろい。
ウナムーノの著作は今回初めて読んだが、読み進めていきたい。
KdF
極上な 産経新聞書評を全文掲載
2018年4月10日
〜極上な 産経新聞書評を全文掲載〜
【文化部・桑原聡が読む『情熱の哲学 ウナムーノと「生」の闘い』佐々木孝著、執行草舟監修 人間本来の生とは? 乾いた世界にあらがう】
《ミゲル・デ・ウナムーノとは何者か? 1864年に生まれ、1936年に亡くなったスペインの哲学者・詩人である。スペイン最古のサラマンカ大学の総長も務めた。
1588年に無敵艦隊がイギリスに敗れ、凋落(ちょうらく)の一途をたどっていたスペインは、1898年にアメリカとの戦争に敗北して海外植民地のほとんどを失う。近代化の遅れが原因なのは明らかだった。当然のように国内では近代化論争が起こる。誰もが「バスに乗り遅れるな」と叫ぶ中で、彼は「発明は彼らにまかせておけ!」と言い放つ。「彼ら」とは科学文明の進んだ英米独仏のことだ。自分たちにはそれより大切な使命があると彼は考えた。「使命」とは、人間本来の生について思索することだ。神の代わりに理性を信仰する近代人は科学文明を生み出し、生活を快適にしていったが、まもなく科学文明が人間の生を支配するようになる。彼はこれに徹底的にあらがうのである。
本書はそんなウナムーノの最高の入門書である。41年前に講談社現代新書の一冊として世に出たが、まもなく絶版となった。ウナムーノの思想が自身の血となり肉となったと信ずる著述家の執行草舟氏が、著者の佐々木孝氏と「ウナムーノ著作集」全5巻を出していた法政大学出版局にかけあって復刊にこぎ着けた。
スペインの哲学者というとわれわれはすぐに、『大衆の反逆』を著したオルテガを思い浮かべる。オルテガの精緻な論理は、合理主義に骨の髄まで侵されたわれわれに理解しやすいからだろう。ところがウナムーノの著作は日本人にとってはかなり手ごわい。なぜなら、パッションがほとばしるあまり論理が飛躍することがしばしばあるうえに、スペイン神秘思想につながるところもあるからだ。
若いころ神に仕えようとした佐々木氏は、ウナムーノのパッションを愛を持って受け止め、その思想の核を日本人に分かりやすく伝えてゆく。
世界は乾いている。その原因は理性信仰の蔓延(まんえん)にある。本書をきっかけに、一人でも多くの日本人がウナムーノ思想に関心を持つことを願う。(法政大学出版局・2500円+税)》
Amazon カスタマー
ウナムーノ精神の媒介者
2018年1月29日
このミゲル・デ・ウナムーノというスペイン人を哲学者と呼べばいいのか、それとも教育家、はたまた詩人と呼べばいいのかは分からないが、とにかくこの思想家は日本においてはあまり名の知られた人物ではない。しかし、その思想には実に刮目すべきところが多々ある。しかし、悲しいかな、あまり有名ではないばかりに、その思想を伝記を交えて適切に、分かりやすく、かつ活き活きとして語るようなウナムーノ論というものは、ウナムーノ自身以上に知られていなかった。だが、どうやらこの一冊はこのことを覆すに足る書物のようである。
本書を手に取ってみようと思う人は、おそらく大半が監修を務められた執行草舟氏の著書のどれかを手にしたことのある方々だろうと思う。ウナムーノという(残念ながら)マイナーな思想家の名を挙げて、そこからしっかりとした思想・人生論・生命論を語ることのできる人物(またそれをしようとする人物)は、執行氏のほかに思い当たらない。だから、あえてその層を狙った切り口で話をさせていただくと、もし執行氏の思想に少しでも共鳴するところがあったならば、このウナムーノ論『情熱の哲学』は絶対に読んでおく価値のある名著である。
偉そうにレビューを書いている私も、執行氏の著書はすべて、また数えきれないくらい読み返してきた人間だが、あの人の思想がこの現代日本において決定的に欠かすことのできないものとなっていることは、諸氏もお分かりだろうと思う。執行氏の思想とは、つまり古今東西の歴史的名著の数々から導き出された、《歴史的正統》ともいえる思想である。現代のように行き詰まりを抱えた時代には、こういった思想のほかに打破の力を持つものはない。
現代の哲学界を見ていただきたい。文学界を、音楽界を、芸術界を見ていただきたい。どこに、かつてのそれらの栄光をしのばせるような面影が見受けられようか。ハッキリ言って、どの界隈も壁につきあたっている。かつては名だたる学者や芸術家が出て、新たな歴史的見地や作品をこの世に遺していったかもしれないが、現代のどこにそれができる人物がいるというのか。現代は空白である。未来の歴史学者の記す書物では、戦後以降のこの現代は空白の時代として扱われよう。数ページを割いてもらえたらバンバンザイだ。日本だけでなく、世界中、どこへ行ったってそれは同じである。国の問題ではなく、時代そのものの問題なのだ。
だから、これを打破するには、どこかで歯車が狂いはじめたその地点に一度立ち戻る必要があるだろう。どこの馬の骨とも知れない私の意見なんて取るに足らないものであるが、私見を述べさせてもらうと、立ち戻る必要のある最も近傍の地点とは、おそらく1850~1930年あたりのヨーロッパである。名前を挙げれば、もちろん筆頭はニーチェであり、他にもベルジャーエフ、ローゼンツヴァイク、クラーゲス(ニーチェ以外はあえてマイナーな哲学者を選んだ)などがいるわけだが、その中にいるのが、本書の主人公であるミゲル・デ・ウナムーノなのである(ちなみに日本人なら内村鑑三がこの群における最重要の思想家だろう)。そして、もし執行氏の書くものに共鳴するなら、それはつまりこの群の人々の思想が必要であることを本能的に察知しているということである。
ある意味、この群の思想家なら誰でもいいともいえるし、また全員が必要だともいえるのだが、私はこのウナムーノという思想家をより強く推しておきたい。というのも、彼の書くものには、本書のタイトルそのもので『情熱』があるからだ。情熱とは受難の別名であり、受難の別名は希望である。つまり、ウナムーノの思想は直截的に希望を語るものである。一人の肉と骨でできた人間が、生身で、全身全霊でぶつかってきてくれるという貴重さがある。それだけでも、ウナムーノに浸ってみようと思う価値はあるだろう。
そのときに、きっと本書は読者諸氏をウナムーノに引き合わせてくれる最良の先導者となってくれるに違いない。事実、私はウナムーノという人物と、本書によってようやく出会えたような気になっている。そして、これからウナムーノが日本において重要な役割を果たしてくるための、大切な橋渡しをしてもらえたように感じている。
他者の思想を語るときに最も重要なことは、その人物そのものになって物を語るということである。つまり、本書でいえば佐々木孝氏がウナムーノと重ならなければならない(もっとも、これはあらゆる学問・芸術がそうである)。そうでなくては、たとえ何万もの言葉で語られたところで、何ひとつその思想は伝わるまい。その点、本書はその務めを十全に果たしているといえよう。
すると、不思議なことが起こってくる。本書で目の前にウナムーノが現れたかと思えば、次は読者たる自分にウナムーノが入りこんでくるのである。けだし、名著というのは必ずこの作用をもつものだ。読者に偉大な他者の魂が入りこんでくるのだ。その意味で、本書はウナムーノの精神を我々に仲介してくれる非常に意義あるキャリアーである。
執行氏の思想に惚れこんだ人は、その核心を見るべきだ。おそらく、諸氏が惚れた執行氏の言葉は、そのままウナムーノの言葉に見えてくるに違いない。そして、それをまた佐々木氏もやってのけている。ウナムーノ、執行氏、佐々木氏、この三者がもし一堂に会することがあったとしても、そこにいるのは一人の人物であることだろう。そして、その姿は、読者たる我々と同じ姿をしているに違いないだろう。
悪漢マサヒロ
「持続する思考」
2018年3月24日
近代において、ウナムーノほど人間というものの在り方について考えた人物はいないのではないか。
他の動物と異なり、人間は「心」や「思考」といった世界から隔絶されたかに思える領域を持っている。「持続する思考」という表現はそういった領域を持つ人間の特質を適格に捉えたものであると言える。「持続する思考」をするということは決して特定のイデオロギーにとらわれることではなく、時に変節することもあるが純粋に真理を求めて自ら考え続けることであると私は考える。そして、そういった人間の思考やその思考に基づく行動が人間を真の人間たらしめるのではないかと私は本書を読んで考えた。
「持続する思考」を貫こうとした人間は、特定のイデオロギーに従属している人間から攻撃を受け孤立することもあるが、戦い続けなければならない宿命にある。嘲笑に会いながらも騎士道を貫こうとしたドン・キホーテや当時の潮流に反して自らの思考体系を確立しようとしたウナムーノこそ人間であるために戦い続けた真の人間であったのではなかろうか。
Diamond
スペインの情熱的思想!
2018年2月1日
ウナムーノという人物がどんな人か知りたく、友人の薦めもあり購入しました。監修が執行草舟さんだと知り、執行さんの本はいくつか持っているので楽しみでした。読んでみると、30代の私には少し難しく感じつつ、スペイン独特の、思想や哲学や熱さのある一冊です!グレーにオレンジの文字もスペインらしい!ウナムーノを知りたい方は、是非とも。