アップダイクの初期短編集『同じ一つのドア』(新潮文庫)に収録されている「日曜のいらだち」という作品に、主人公がウナムーノの『生の悲劇的感情』を読んでいるシーンが出てくる。もっとも訳者の宮本陽吉氏は『生の悲劇的感覚』としているが。調べてみると英訳は “Tragic Sense of Life” だから「感覚」と訳せるわけだが、スペイン語の sentimiento はやはり「感情」と訳すべきであろう。それはともかく、アメリカのいわゆる知識人がウナムーノをどう読んでいるのか、興味はある。たぶん日本の場合と同じく、オルテガの方が理解しやすいのではないか。
ちなみに『悲劇的感情』が初めて英訳されたのは、1921年ということであるから、イタリア語(1914年)、フランス語(1917年)に次いで三番目となる。日本は花野富蔵訳で1942年となっているが、まだ現物を見たことはない。
とここまで書いてきて、あれっこういうものは『余滴』の方に書くべきだと思い当たった。そういえば、『余滴』も含めて、スペイン思想研究の方は、このところすっかり怠けている。今日の午後は、一年以上も、つまり引越しのとき以来ずっと立てかけたままだったソファーをようやく床に並べた。明日から一階の整理を少しずつ再開して、下でも客人を迎えたり、本が読めるようにしよう。
明日は珍しく晴れ間が見えるそうだ。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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