髭の隊長さん

イラクに派遣された自衛隊の隊長さんの顔を見るたびに思うんやけど、あの髭いつからたくわえはったん?
 いや、なかなか似合ってるんよ。わても昔、鼻の下に髭のばしてたことあったん。もちろんその頃は黒々しとーて、自分で言うのなんやけど、なかなか様になってたんよ。
 そいで気になるんとちゃうけど、あの人、髭があったから隊長さんに選ばれはったん?もともとあったん?そうやろね、まさか髭で選ばれるなんてね?
 でも隊長さんになるのに見栄えちゅうのかな、つまり男前であること関係あらへん?
 なんか先遣隊の隊長さんも、本隊の隊長さんも、表に立つ人、みんな髭たくわえてなかったん?
 あれってやっぱしイスラム世界に行くからって、髭伸ばすよう上から指示あったんとちゃう?だってアラブ世界じゃ、髭伸ばしてないと一人前の男とみなされんちゅうし?
 でもそんなこと考えていくとちょっと可笑しいー気持にならしまへん?だってなー、昔ピーター・オトゥールの『将軍たちの夜』という映画おましたろ。ちょっと気色わりー映画だったけど、要するに軍隊という男社会の倒錯したエロスつーの?、三島由紀夫はんの『楯の会』にも典型的に現れてまっしゃろ、タナトスとエロスの……
 あっそう、それ考えすぎ?そうやろね。でもねー、人の生き死にの場に見栄えとか好感度とか、つまりパフォーマンス見え見えのことされると、ちょっと嫌―な感じしまっせ。(気色わるー偽関西弁でスンマソン)

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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