簡単に言えば単純な思い違い、うっかりミス、それなのにどうしてか、しばらくは落ち込んだ。
一週間ほど前、大熊に持っていったはずのウメさんの郵便貯金通帳が見つからなかったことがある。落としたとしたら、直ぐにも届けを出さなければ、とフリーダイアルの亡失センター(?)に連絡。ところが二日後、大熊から通帳の入った茶封筒が送られてきた。あの日、ウメさんの部屋に置き忘れてきたわけだ。それはいいとして、今度は届け出そのものの解除手続きが必要。そして郵便局に行ったときその「事件」が起こった。つまり届け出用紙に記入しながら順番待ちをしているとき、まだかなり時間がかかりそうなので、つい記帳を思いたったのだ。通帳を差し入れ口に入れたところ、「この通帳は使われません」というメッセージが出たと思ったら、男の係員が飛んできて、「お客さん、すみません、こちらの部屋でお待ちください」と薄暗い部屋に招じ入れられた。あれっ変だな、と思ったが、すぐには何が起こっているか分からなかった。そして不意に気がついた。そうだ、私はいま他人の通帳を拾って不正に金を引き出そうとしている男と思われているんだ、ということに。
解除の手続きが済んでいない通帳をうっかり使おうとしたこちらのミスであることは間違いないが、小さなオフィスで、一方で解除の手続きが進んでいる(用紙をもらって記入方法などを指示されている)のに、数メートルも離れていない、しかも間に遮断するものもない空間で、他人の通帳を使おうとしている「犯人」と思われているこのギャップの激しさ。係員が来たときに、身分を証する「健康保険証」や「解除申請書」などを見せたにも関わらず、別室に「案内」されたのだ。
係員の行為はマニュアルどおりのものなのであろう。しかし身元を証明する書類など(印鑑も)を確認できたのだから、また別の対応があったのでは?要するに、(身元の分からない大勢の人間が行き来する大都会ならまだしも)どんな機械より「生きた人間」の現実把握・確認・判断を優先させるべきでは…… どちらにしても、うろたえ、頭に血が上ったことが、なんとも情けないのだ。
こういうことはこれから多くなるだろうが、悠然と対処する習慣を身につけるようにしよう。ともかく「みったくない」。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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