『モノディアロゴスⅣ』の編集が終わって、あとは毎日すこしずつ印刷・製本をしていくだけになった。だから今晩はご褒美として、久し振りに映画でも観ようかということになった。といって誰かに相談したわけではない。以前だったら美子と一緒に観たのだが、現在ではそれもできない。最近まともに映画を観たことがないのは相手がいないからだと初めて気がついた。まっいい、側に坐っているだけで我慢しよう。
録りためた映画のどれを観ようか迷ったが、題名が面白そうだったので『トゥルー・クライム』にした。クリント・イーストウッド主演のサスペンスらしい。酒と女にだらしなく、幼い娘がいる家庭も崩壊寸前。その彼が、執行前の死刑囚の無実を信じて、真犯人(すでに死んではいたが)を見つけて、執行を寸前で止めさせるという、かなり荒い筋書きの映画である。
あとから調べると、やはり彼自身が製作・監督した映画(1999年)だった。つまり『ダーティー・ハリー』の刑事が新聞記者に変わっただけの映画で、サスペンスの勘所だけは知っているが、犯人を黒人にしてすこし社会派監督ぶってはみたが、人間の描き方がどうも荒っぽい。やはり彼は、昔とった杵柄ならぬマグナムをぶっぱなしていた方がお似合いかも。まっ娯楽映画としてそれなりに楽しんだのだから、ケチをつけるのはやめよう。
連日、エジプトの無血革命のことが報じられている。久し振りに嬉しいニュースだ。フィリピンのイメルダ(肝心のだんなの名前が出てこない、出てきた!マルコスだ)、ルーマニアのチャウチェスク、そして今度のムバラク、などの失脚を見て、ショウグン様は何を考えているんだろう。自分はそうならないと思っているのだろうか。人間は、とりわけ権力者は、どこまで馬鹿なんだろう。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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