一休み

実は今日というべきか昨日と言うべきか、昨年七月末から約二百日に及ぶ不倒記録がついに途切れた。以前の様式だと、カレンダーに記載日が記録されていたので分かりやすかったが、今の様式になってからも、正真正銘、一日も休まず書き続けてきたのである。疲れと睡魔、加えて時には暑さと寒さの中で、何度休もうと思ったことか。しかしそんな時、カウンターの数字を見て、期待に応えなければと、歯を食いしばって書いてきたのである。
 しかし昨夜、ここ数日の『モノディアロゴスⅣ』の印刷・製本の合間に、ふと考えた。確かにこのカウンターの数字のいくつかは、あの人この人と特定できる。しかしそれ以外の数字は、誰なのか見当もつかない無言の数字である。その数字の背後に実際に誰かがいるのか、それとも……
 期待に応えるだと? 誰が期待しているというのか。だいいち、その数字の背後に人がいたとしても、その彼あるいは彼女が私の書くものを実際に読んでくれているのかどうか、それさえまったく分からないではないか。
 そう考えると、なんだか急に馬鹿らしくなってきたのだ。まったくの独り善がり、独り相撲……
 ただ、この半年あまり、書き続けることによってなんとか生活を立て直してきた事実は否定できない。お前はのっぺらぼうの読者のことを気にしているが、しかしいちばん救われてきたのはお前自身ではなかったか? 売れない番組のプロデューサーみたいに、やたら視聴率を気にしてどうする?
 ともかくカウンターの数字を気にせず、また不倒記録なんて馬鹿げた記録など目指さず、書きたいことを…眠くなってきました、そう眠いときは無理をせず、ゆったりした気持ちで、また明日から再出発だ!

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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