実は今日というべきか昨日と言うべきか、昨年七月末から約二百日に及ぶ不倒記録がついに途切れた。以前の様式だと、カレンダーに記載日が記録されていたので分かりやすかったが、今の様式になってからも、正真正銘、一日も休まず書き続けてきたのである。疲れと睡魔、加えて時には暑さと寒さの中で、何度休もうと思ったことか。しかしそんな時、カウンターの数字を見て、期待に応えなければと、歯を食いしばって書いてきたのである。
しかし昨夜、ここ数日の『モノディアロゴスⅣ』の印刷・製本の合間に、ふと考えた。確かにこのカウンターの数字のいくつかは、あの人この人と特定できる。しかしそれ以外の数字は、誰なのか見当もつかない無言の数字である。その数字の背後に実際に誰かがいるのか、それとも……
期待に応えるだと? 誰が期待しているというのか。だいいち、その数字の背後に人がいたとしても、その彼あるいは彼女が私の書くものを実際に読んでくれているのかどうか、それさえまったく分からないではないか。
そう考えると、なんだか急に馬鹿らしくなってきたのだ。まったくの独り善がり、独り相撲……
ただ、この半年あまり、書き続けることによってなんとか生活を立て直してきた事実は否定できない。お前はのっぺらぼうの読者のことを気にしているが、しかしいちばん救われてきたのはお前自身ではなかったか? 売れない番組のプロデューサーみたいに、やたら視聴率を気にしてどうする?
ともかくカウンターの数字を気にせず、また不倒記録なんて馬鹿げた記録など目指さず、書きたいことを…眠くなってきました、そう眠いときは無理をせず、ゆったりした気持ちで、また明日から再出発だ!
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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