ちょっとヘタレたかな?

*九日朝の追記。昨日、少し気弱になった私をたくさんの方々が励ましてくださいました。右のコメントのことです→。ヘタレな私が触媒になって、多くの善意の、そして人間の尊厳性を示す魂のエネルギーが渦巻いているように思われます。ぜひ皆さんもこの熱い魂の輪に加わってください。(今朝七時の例の数値 7.1マイクロシーベルト/時、最低記録を更新中。風向きで少し上がることがあると思いますが、そんな数値に一喜一憂なんぞしてたまるか)。

 

正直言うと、昨夜の余震というにはあまりにも強い地震に、ようやく以前の日常に戻ろうとしていた、その機先を制せられたというか、鼻っ柱ををへし折られたというか、ちょっと参ってしまった。流行の言葉を使えば、いささか心が折れたのである。
 いやもっと正確に言えば、昨日までは、自覚はしていなかったが、ある意味で精神の高揚状態が続いていたと言える。そしてそのボルテージの高い精神状態が、昨日あたりからようやく緩み出し、日常的感覚が戻りつつあったそのときに、昨夜のまったく予期しない強い余震に不意打ちを食ったのである。
 朝起きてからも、そんな精神状態が続いていた、いや今も続いている。どうにも元気が出てこない。しかし贅沢は言うまい。たとえば避難所ではもっと過酷な非日常の時間が流れているのだし、今日は金曜日、たとえば西内君はボランティアで救援物資の仕分けを手伝っているのだ。甘ったれるんじゃない!
 そうだ、本当の勝負はこれからなんだ。電話やメールでのエールが途絶え、このモノディアロゴスへの訪問客も次第に減っていく。勝負はここからなんだ。
 いま午後六時ちょっと前。朝からなにかはっきりしない一日だったが、最後に来て西空がわずかに赤らんだ。再開二日目の今日、どうにも散歩に行く気になれなかったが、明日からは風向きをチェックしてからともかく出かけよう。私家本の印刷・製本、本棚に乱雑に戻しただけの本の整理、洗濯…やることはいっぱいあるぞ。
 へたれた姿を見せてごめんなさい。明日からは心機一転頑張ります!皆さんも頑張ってください!
 最後にいつもの数値 夕方六時現在 7.2マイクロシーベルト/時、おや最低値だぞ!

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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ちょっとヘタレたかな? への9件のフィードバック

  1. 高橋です! のコメント:

    佐々木様(先生?)のおかげで、本を贈る準備を進めています!
    (いや実は、南相馬市に贈れるかどうかは未定なのですが、ともかくも必ず贈ります)

    疲れたときはヘタレれないと、そのあと元気も出ないと思います。
    (えらそうなことをごめんなさい)
    引き続きブログ拝見し、またメールもさせていただきます!

  2. yuko のコメント:

    初めまして、こんにちは。
    いつも拝見しております。
    毎日見ています。

  3. AK のコメント:

    まだこれからだと思っている人はたくさんいますよ!
    これはわたしたち全員のこれからにもかかっていることですし、
    大きく騒ぐわけではないとしても、
    静かに深く、懸命に考えている人はたくさんいるはずです。
    佐々木さんはそのための大きな指針のひとつです。
    でもどうか、がんばりすぎたり無理をなさったりはされませんように。

  4. ミチル のコメント:

    先生、つかれたらへたってください、ここにぶちまけてください、
    すべてが「南相馬の真実」です。長く歴史に残るでしょう。
    わたしも毎日見ています、友達に紹介したら泣いてしまったそうです。
    みんなで応援してます。

  5. K のコメント:

    先生の思いは、新聞等やこのブログを通して、たくさんの方面に伝わってるんじゃないかなと思います。
    それって、それだけで、やっぱりものすごいことだと思いますよ(>_<)

  6. 松崎孝子 のコメント:

    昨晩の地震は、私のいる新潟県三条市でも強い揺れでした。沢山の人がテレビのない体育館を抜け出してロビーに集まり、故郷を案じて眠れませんでした。
    被災した私たちは、自分のあばら骨が折れているのに気付く間もなく、とにかく立上がっていなきゃと思うばかりに、ヘタレることも忘れてしまいがちです。
    私達はこんなにも長く日常というものから引き離された経験がなくて、日常に甘んじて生きてきたので、ちょっとのかすり傷にも過敏に反応できたけど、あの日以来余裕がなくて、肋骨が折れていると自覚できないのです。
    良かったです。
    先生がまずヘタレて下さらないと、県外なぞに避難している私の立場がありません。
    先生が指針なのです。肋骨はきちんと折れてますね。疲れていらっしゃいますよね!
    きちんと余裕もってヘタレていただかないと、困ります。
    朝、歯ブラシと歯磨き粉で歯を磨くこと、紙コップがあれば、インスタントコーヒーを作って飲もうとすること、子供達にいってらっしゃいと言って学校へ送り出すこと、たとえ帰って来る家が、他人が100人も住んでる公共施設であっても、『おかえりなさい』と迎えられるということ…。
    そんな日常を少しずつ取り戻して行こうとする私達に、昨晩の地震は『まだ立ち上がる気力があるか?』と挑発してるようでした。
    私はまた明日からも、肋骨を確かめる余裕をもって、時々ヘタレな自分も自覚して、それでも日常のしっぽをがっちり掴んで生きてくつもりです。

  7. 大越 のコメント:

    こんにちは。朝日新聞に掲載された日にコメントした者です。

    東京にいる私にも何かできないか、と、せめて、ゴールデンウイークに、何かお手伝いできたらと、ボランティアに登録しました。
    知り合いの何人かも仙台、岩手、南相馬に行きました。

    へたれて当然です。本当に大変な事になりました。でも、こうして、毎日チェックして何かに繋げようとしている人間もいますので、あまり力を落とさないで下さいね。

  8. 松下 伸 のコメント:

     佐々木 様
     
     美しい歌声には、うつばり(梁)の塵も落ちる、と言います。
     真率な言の葉・・・心ふるわせ聞いています。
     天井裏か床下の塵にすぎない私ですが・・・
     お大事にしてください。奥様も。
     

     

  9. やなぎ のコメント:

    私は先生のブログを中日新聞に掲載されてから毎日見ることが日課となりました。
    被災地からは遠いところには住んでいますが近いうちにおこるであろう東海大震災に日々怯えております。先生のブログを見ていると毎回いろいろなことを感じさせられます。
    どうか少しでも元気をだしてくださいね。
    今生きている人は心を痛めても亡くなった人の分まで運命を背負って生きていかなければならないのですから…。

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