いま少しばかり心地よい興奮状態の中にある。変化の無い毎日なのだから、たまにはこういうささやかな悦楽に恵まれてもいいではないか。
つまり今朝方、いや数分前、今日がまさに締め切り日だった原稿を書き上げたのである。それも畑違いの美術展に向けたメッセージを。
今年の10月から来年の6月まで多方面に亙って繰り広げられる「スペインにおける日本年」の一環として10月5日から12月1日まで、福島市の県美術館で開催される『ホセ・マリア・シシリア フクシマ・冬の花』展のプログラムのための原稿である。
もちろんスペイン国営の Acción Cultural Española(AC/E)からの正式依頼は既に4月に舞い込み、さらにその月の22日に、こうしたスペイン語圏からの誘いの風をいつも運んでくれるゴンサロ・ロブレードさんに案内されて、シシリア氏自身が我が陋屋を訪ねてくださり、ご本人から執筆依頼の念を押されたのであるから、締め切りの6月10日、つまり本日にはとっくに書き終えていなければならないものであった。
しかし長い間に固まってしまった習性は治りようもなく、ぎりぎりまで書き出せないでいた。ところが昨日、久しぶりに(?)瞬間湯沸かし器が小沸騰することがあって、それを紛らわせるためにシャカリキになって書き始めたのだ。危うい綱渡りだったが、天が(?)味方したのか、思ったより筆が進み、とうとう400字詰め原稿用紙21枚ちょっとの『魂の叫び ホセ・マリア・シシリア展に寄せて』と題する原稿をさきほど仕上げたのである。現在スペインとは時差7時間ということなので、向こうはまだ朝の4時、仕事初めはまだだろうから、午後4時ごろゆっくり電送するつもり。
内容は? たぶん著作権その他が関係していると思うので(?)、プログラム発刊までは公表できないが、しかしただ一つだけぜひ報告したいことがある。つまりわが東北の生んだ名喜劇俳優・伴淳三郎のあの不滅のギャグ「アジャパー」が、広く世界に、といってもいいほど広大なスペイン語圏にお披露目できたことで、これが何よりも嬉しい。
何のこと、とおっしゃる? お分かりにならない? だとしたら、あなたはモグリですぞ。右の検索モーターに「アジャパー」と入れてみてくださいな、たちどころに謎が解けますから。
チョー気持ちいーい!、何?これ北島なんとかのギャグ? なら取り消そうっと。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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国民が日本の方向を決めるための唯一の参加は選挙だけなんでしょう。多数決という論理で日本の将来の決め事を国会議員に託すわけですが、この多数決が曲者で、原発ひとつ取っても原発のリスクを背負わないで原発の恩恵に与る人が多ければ、原発推進が多数決で決めた日本の方向性だと判断してしまう。沖縄基地問題も同じだと思います。
先生の言われる「アジャパー」は正にピッタリな表現です。他者の置かれている環境、境遇を自分のことのように考え、自分のことばかりでなく、全体を良く見渡して熟慮し、公明正大な視野に立脚して日本の方向性を決める今度の参議院選挙にしなければならないと思います。