愛=かなし

※以下のものは、「談話室」への阿部修義さんのコメントですが、阿部さんのお許しも得ないで勝手にこちらに移させていただきました。なぜかはお読みいただければお分かりと思います。

 岩谷さんのブログは、先生が増設されてからは毎回拝読しています。先日も鈴木大拙のお話をされていたのを覚えてますが、この「大拙」という雅号と文章の主旨である「道化」とは密接な関係があるのではないでしょうか。先生が、中国思想とスペイン思想の関係性を以前示唆されていたことを思い出しましたが、東洋では、拙とか愚などを人間の道を歩む上で非常に尊重されていた歴史があったんだと思います。それは、利便性や物質欲など本来人間にとって枝葉末節なものよりも、もっと根源的な、全体的、普遍的なものを常に省みるようにと自戒を込めていたからだと思います。先生はこう言われています。

 「ドン・キホーテこそ道化の極致ではないでしょうか。」

 スペイン人にとってのドン・キホーテの生き方は、東洋での拙や愚の生き方に、そういう意味では近いのではと私は感じます。口先だけの軽佻浮薄な小才子には、それはバカげた、まさに愚かしいように見えるかも知れません。しかし、愚直に常に物事の根源に返った生き方をするには「道化」に徹することが、あらゆる相対に対応できるからなんでしょう。その道は険しく至難なものです。そして、その根底には常に愛がある、愛を「かなし」と読ませた古人の教養の高さを感じます。岩谷さんが先生に贈られた意味には、そういうことも含まれているのかも知れません。


◆大事なお知らせを忘れていました。岩谷さんの個展が東京で開催されます。

日時 6月19日(火)~7月1日(日) 25日(月)はお休み
   11時-19時 最終日は17時終了
場所 銀座2-11-4 富善ビル1F
   ギャルリーヴィヴァン
   Tel. 03-5148-5051
  交通 都営浅草線東銀座駅A8、日比谷線東銀座駅A2

私は行けませんが、皆様どうぞいらしてください。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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