第15巻発刊

急に夏めいてきましたが、皆様お変わりありませんか。当方、美子の胃婁の扱いもすっかり慣れて、朝晩二回の栄養剤注入もベテラン介護士の域に達しました(いえいえまだまだおっかなびっくりですよ)。ブログは少し怠けてましたが、でもその間、以下のような仕事をしてました。つまり「モノディアロゴス」第15巻などの製作です。タイトルは『遡行と螺旋』、皆さまにはその意味すぐお分かりでしょう。
皆さまのもとに届くには少し時間がかかりますが、楽しみに待っていてください。今回はその「あとがき」だけご紹介します。


あとがき

 先日急に行路社版『モノディアロゴス』を私家本に作り直すことを思い付き、暇な時間を、といって現在の私にはすべての時間が暇といえば暇だが、その作業に没頭した。パソコンの画面を見ながらの細かい作業なので、かなり目を酷使したようで、目脂が多くなった。それでアマゾンから「ルティン」というサプリを取り寄せて昨日から飲み始めた。その効果はまだ分からぬが、従来のブルーベリーものよりいいという宣伝文句を信じた。
 ところで作業を始めてから気が付いたのだが、実質第一巻の行路社版は収録分量が以後の私家本の優に二倍あった。それで急遽Iの①、Iの②と二巻に分けた。つまり私家本は実質的に全十五巻なったわけである。
 作業は昨日終えたが、勢い余って(?)今度は第十五巻を作り始めた。二五〇ページあたりで、ちょうど「ゆうメール」の送料が三〇〇円ぎりぎりになるので、程よいところで切り上げたのが本書である。
 第九巻からそれぞれ独自のタイトルを付け始めたが、さて本巻はどうしよう。そこで思い出したのは、以前メール・サイトの表紙(?)にあるメモ欄に第十五巻のために考えていたタイトルである。本当はそこに「時軸と螺旋」とメモしていたのだが、時軸とはあまりに硬い。それでそれを遡行に替えて『遡行と螺旋』にした。最近、行路社版をまるで日めくりか聖書(?)のように一日2~3篇読む習慣があり、その時考えたのは時間軸を前に前にと進むだけではなく、私みたいな年ごろの人間(本当はすべての人と言いたいが)螺旋状に積み重なっている自分の過去を今に重ねて生きる方がもっと大事ではないか、いやむしろそうすべきだと思っている。そのことを今度のタイトルで表現しようと思ったわけだ。後半部の「焼き場に立つ少年」をめぐる経緯など、このことと深く関係している。
 言いたいことは山ほどあるが(ないない、そんなに)、「あとがき」としてはこれで充分だろう。

二〇一八年六月七日

      貞房識

*書き忘れましたが、先日「北海道新聞」の岩本記者が「焼き場に立つ少年」について書いてくださいました。上の「メディア掲載履歴」の「新聞報道」に収録してもらいましたので、どうぞご覧ください。

カトリック新聞 2018年7月22日

アバター画像

佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
カテゴリー: モノディアロゴス パーマリンク

第15巻発刊 への1件のコメント

  1. 阿部修義 のコメント:

     私の家から車で10分ぐらいのところに小さなお地蔵さんが祀られています。近くを通った折には必ず寄ってお参りしています。人間は生きている限り、たった一度の人生で何らかの不安をかかえて生きています。このお地蔵さんも私たちと共にこれからもずっとこの場所に立ち続けます。人智を超えた大いなる存在(聖なるもの)を私たちは信じ、心の奥底に常にそれは鎮座しているのでしょう。普段は決して見ることも聞くこともできない真っ暗闇の中で、その存在に気づかせ、導いてくれるものが『モノディアロゴス』だとの感慨を私は最近とくに深くしています。私が日ごろ持ち歩いている愛用のカバンのなかには、このお地蔵さんのお守りと先生の手作りの『平和菌の歌』の豆本が入っています。16年の年月を経て第15巻発刊と行路社版『モノディアロゴス』の私家本での復刻版発刊おめでとうございます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください