右足親指の化膿

はっきりいつからとは覚えていないが、たぶん三週間にはなるだろう、右足親指の爪が肉に食い込んで膿んだところが、まだ完治しない。二週間ほど前、皮膚の化膿にいいという抗生物質「クロロマイセチン軟膏2%」を薬屋で買ってきてつけているが、腫れは引いて、歩くにも支障はないし、放っておいても痛くはないのだが、なにかの拍子にその部分をぶつけたりすると、うっ、と思わず声を出すほどの痛さが走る。
 夜ふとんの中で、左足をぶつけたりすると、夢うつつながらしばらくは痛さが残る。生まれてこの方、病院のお世話になったことはほとんどないが、小学低学年のころ、やはり足指(右足だったか左足だったかは覚えていない)が化膿して病院で麻酔をかけて治療してもらったことを思い出した。そんなこともあって、昨夜、ヤフーで「足親指 化膿」で検索してみたら、同じ悩みを訴える人、それに答える人、のたくさんの書き込みが見つかった。
 ある人は病院に行って、化膿部分を切開してもらったが、爪が伸びたらまた化膿して困っているとか、切開してもらったはいいが、その部分に肉芽が出てきた、などさまざまなやりとりが出ている。で、下手に切ってもらわない方がいいこと、そして完治するのに時間がかかるということ、を学んだ。これ以上悪くならず、歩行にも差し支えないなら、とうぶん毎日根気強く消毒して軟膏をつけることを続けよう、と思っている。
 しかし日常生活でなにか問題が起こっても、たいていのことはネットで調べられる、中には怪しいものも混じっているかも知れないが、それを割り引いても、ネットも馬鹿にならないな、と今更のように感心した。たとえば中には、自分の自己治療の経過を写真入りで解説しているものまであって、この愛他精神と言うか博愛と言うか、そのエネルギーはどこから出てくるのか、不思議なほどだ。たとえば、「ドンタコス22」氏の返事はこうだ。

 「足親指外側の爪の境目に、肉芽が大きくできました。
手術がいやなので色々調べるうちに、クエン酸が効くとあるHPを見て試しに、早速ドラッグストアでクエン酸を購入しました。
健栄製薬、クエン酸(結晶25g)300円位を使用しました。
クエン酸+絆創膏+マキロンで一ヶ月位で完治しました。クエン酸をつけると、肉芽が黒く干からびますが、根気よく塗り続けて今は肉芽の跡形も無く、それに再発もありませんよ。試してはいかがでしょうか?」

 さらにこう続けている
「肉芽の消滅まで三ヶ月の自己治療の闘病記のライブ中継です スライドショーになっています クリックして見てください」
 クリックしてみると、肉芽があるときの写真と、直ったときの写真がカラーで載っている。 
 あゝ、何たる自己犠牲精神の発露よ!このわけの分からない熱心さと言うか、懇切丁寧さと言うか、そしてもったいないと言うべきか、少し気持ち悪いと言うべきか、ともかくそのエネルギーに圧倒されて、私のちっぽけな心配など、どこかに飛んでいきました、はい。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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