ぼやきも怒りもないままに

台風の接近のせいか、昨日の午後あたりからなんだか肌寒い、いやそれはないが、しかし小さなエアコンがうなるまでもなくなった。寝るときは美子も私も、タオルケットを腹に乗せるだけだったのに、昨夜は足元にたたんでいた(また見栄を張る、ただ蹴落としていただけ)毛布をかけて寝た。
 温度の低さは今日も続いていて、午後などはしばらく休んでいた夜の森公園散歩を再開しようかな、と思ったほどだ。ただし空模様が怪しく、今にも一雨来そうだったので買い物だけにしたが。
 ともかくここ数日、来客もなく、特にしなければならないこともなく、ぼんやりゆっくり過ごした。でも明後日、十和田から愛たちが戻ってくるので、少し賑やかになりそうだ。今日のメールには、市のはからいでブルーベリー農園に招待されたときの写真が添付されてきた。さすが緯度の高い十和田だけはある。五月の帰省のときは三泊四日だったけれど、今回もそのくらいの予定なんだろうか。聞けばいいものを、なんとなく聞けないままだ。
 論創社の方がいよいよ本格的に動き出したが、実はタイトルをまだ決めかねている。今のところ『原発禍の南相馬に生きる』がメーン・タイトルになりそうだが、私としてはせっかく知られてきたモノディアロゴスを副題にしたいがどうなるか。ブログを読んでくださっている皆さんからもいい考えをいただければ、などと考えている。
 それから文中ところどころに出てくる個人名の扱いだが、私としては原則的に実名を載せたいと思っている。なにもイニシャルでぼかす必要はないのでは、と思うのだ。悪口を言うのでなければ、別に隠すことはないのでは。ただし悪口でも、政治家など公人相手の場合は有名税と思って我慢してもらうつもりだ。
 前にも言ったと思うが、内容は大震災前日の三月十日から、七月六日まで。つまり美子が少し歩行が覚束なくなり、体を心持ち左に傾げるようになったあたりから、震災の後、神の場所がなかった、などという問題発言が最後に来るような構成で、図らずも震災・原発事故が孕んでいる深い問題空間をなぞったまま、つまり大きな疑問符を提示したまま幕を引く、というちょっと狡い構成になっている。
 解説は、おっとこれは企業秘密だろうから、今は言えない。私が言い出したのではなく、論創社の編集者が挙げた名前だが、私としてもまったく異存がない。異存がないどころか、もしその人が書いてくださればどんなに嬉しいだろう、と先ほどご本人にメールでお願いしたところだ。
 ともかく刊行されるのは八月十八日だそうです。乞うご期待!

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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ぼやきも怒りもないままに への2件のフィードバック

  1. 田渕英生 のコメント:

    先日はありがとうございました。

    帰京してみると日常の雑事に追われてすぐ時間は過ぎてしまい、
    ごいっしょに夜ノ森公園に行ったのももう遠い昔のようです。

    前回は作付け中止の南相馬市にあって試験的に田植えをされた農家の方などに
    話をうかがいました。ちょうど牛からセシウムが出た時と重なりましたので
    「この先自殺者が増えるのでは?」と云われていたのに心が痛みました。

    ところで、お話ししたことがある過去に演出に参加した原発の映画が
    再上映されることとなりました。この場を借りてちょっと宣伝させてください。

    「あしたが消える〜どうして原発?〜」渋谷ユーロスペースで8/6より公開
    (モーニングショー 毎朝10:30より1回上映)

    22年前の製作ですが、被曝労働者の生々しいインタビューや、
    福島第一原発4号機の設計に携わった田中三彦氏の証言などに加え、
    チェルノブイリやスリーマイルなどの映像から、もし日本で重大な事故が
    起こったらどうなるかを想起させる55分の映画です。
    原発の危険性を訴え、事故が起こる前になんとかしたいと製作したのですが…

    東京近郊の方がおられましたら是非ご覧いただけると幸いです。
    http://www.cinematoday.jp/page/N0033880

    勝手に宣伝させていただきすみません。
    西内さんにもよろしくお伝えください。

  2. アバター画像 fuji-teivo のコメント:

    田渕さん、再上映の嬉しいお知らせどうもありがとう。どうぞ東京近郊のみなさん、ぜひご覧になってください。私は行けませんが、ご覧になった方の感想などぜひお聞かせてください。

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