あまりに天気がいいので、バッパさんを迎えに行く前に少しドライブすることにした。今では渋佐に代わって町の海水浴場となっている北泉に行こうと思ったのだが、六号線から入る道が分からず、結局は小浜(おばま)に出てしまった。渋佐と同じくここも河口になっているのだが、川の水は澄んでいて、絵の心得があればぜひスケッチしたくなるような佳景が広がっていた。橋の近くに車を止め、浜の方に歩いていくと、釣り道具を持ったおじさん二人とすれ違った。橋の欄干から下を覗いてみると、15センチくらいの魚が川上に向かって群れをなしている。「これ何ていう魚?」と聞くと、「…」と聞き取れない言葉を返してくれた。聞き返すのも気が引けてそのまま「あっそう」と昭和天皇みたいな答え方をして通り過ぎたが、たぶんハヤかなんかだろう。
砂浜で妻と写真を撮りあった後、車まで戻りぎわにもう一度橋の上からあたりの景色を俯瞰したが、まるで泰西名画をみるような長閑で広やかな風景である。腰の調子が良くなれば、妻と約束したように、眺めるだけでなく少し歩いて足腰をきたえなくては。
-
※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
キーワード検索
投稿アーカイブ