午後一時半、美子と敦子を連れて雨の中、小高に向かう。月一度の「島尾敏雄を読む会」のためである。もちろん、美子と敦子は、その間、展示室や図書館で待ってもらうことにした。
会には、台風接近の中、五名ほど(全員男性)が来た。二番目のテキストとして『いなかぶり』を選んでいたのだが、話の流れで、予定を早め今日からこの作品を取り上げることにした。小高を舞台とする作品は、この他に『砂嘴の丘にて』があるが、島尾作品世界を地元から読み返す絶好の機会となりそうだ。これらの作品の中で頻繁に使われる相馬弁や、植物や動物の名前などを手がかりに面白い読み方が出来そうだ。
一人の参加者は、『砂嘴の丘にて』に出てくる折笠先生のことや、その舞台となった海岸など地形的にも特定できそうとのことなので、ぜひそれについてまとめてほしいとお願いした。ともかく、どんな読者にもできない地元からの視点でこれらの作品について、一種の共同研究をしてみようではないか、と提案した。みんな乗り気のようだ。出来ればそれらをワープロなどでまとめてみたいと思っている。
台風は幸い逸れて宮城県の方に進んだらしく、さほど強くない雨の中、帰りは旧国道ではなく六号線を帰ってきた。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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