朝から小雨が降り続いて、なんとも鬱陶しい一日。情けないことだが、気分までが鬱屈して、これから何もいいことなど起こらないという暗い思いに傾いていく。ただ動物たちにはなんの屈託もなく、いつもの通り元気なのが救いである。クッキーはこのところ努力の甲斐あって体重が減り始め、便の始末のために箱から抱え出すときにもずいぶん軽くなった。ともかく落ち込むことを知らぬこのバカ犬に、夫婦はずいぶんと救われている。雨のため外出できない猫たちも、今日は朝から所在なさげにうろうろしていたが、そのうちミルクは微妙な温かさのあるビデオ・レコーダーの上に、ココアは小さなボール箱にもぐりこんで夕方まで爆睡状態。
夕食準備のために下に降りてみると、享楽の温泉ツアーから昼ごろ勢いよく帰ってきたバッパさん、すでに残りご飯で夕食をすませた由。バッパさんのために夕食が五時十五分まで繰り上がったわれわれ夫婦としたら、これ以上夕食時間を早めるのは不可能なので、明日からは少なくとも五時までは我慢するようにと釘を差さざるを得ない。
ところで夕食後のテレビは、福島原発のある八町村が運転再開の要望書を国家保安院と東京電力に出したというニュースを流している。まだ点検が終わらず運転再開のメドが立たない時点でのこのとんでもない勇み足。再開の見通しが立たないことへの地元住民の不安を受けての要望とのこと。ほんとかい、ほんとだとしたら、とんでもないアホどもでねえかい。一応要望書冒頭に、以後は事故などの際の国の責任の明確化を要請しているが、バッカじゃないの、もともと国が責任逃れの姿勢だったから起こったことで、この先その姿勢が変わるとも思えない。それにお上にすべてをまかせる、などというおよそ大時代的な、地方分権の精神に真っ向から逆らう文面にただただ唖然とする。もともとこの程度の認識しかないのに、不正発覚の時点では一応は驚きと「遺憾の意」の表明。それがまさに「ポーズ」でしかなかったことがはっきりした。
原発に依存した町財政の根本からの見直しもないまま、そして地元へのわずかな利潤還元にすがったまま、不夜城東京の際限の無い電力消費に奉仕しようとするのか。まとめ役のF町町長の、それこそ何の屈託もない晴れ晴れとした表情。いったい今まで何度、国に煮え湯を飲まされてきたことか。すっかり忘れたのだろうか! 嗚呼、巳矣乎(やんぬるかな)!
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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