尊敬する先輩が主催者でなかったなら、「こんなもの芸術でも芸能でもねえぞー!場末のストリップ・ショー(実は見たことないが) の方がまだ上品だぞー!田舎だと思って馬鹿にすんなよー!」と叫んでいたかも知れない。「金返せ!」とも言いたいが、せこいと思われるのでそれは引っ込める。ともかく下品としかいいようが無い。これまた見たことは無いが、オナニー・ショー(そんなものねえか?) みたいなもんだ。だいいち気持ちが悪い。赤ふん一丁で等身大の女の人形ともつれ合う様は、ほんとヘドが出そうだった。こいつ明らかにとびっきりのナルシストだ。薄暗い舞台の上で、裸で女体ともつれ合う図、せめて肉体が美しかったならエロチックな美も醸し出されたかも知れないが、コタツの中で汗ばんでいる中年男の裸体みたいなものなぞ、ただ気色悪いだけ。
主催者側としては、いつもいつもヒットというわけにはいかず、ときには今日のようなカスをつかまされることもあるはずだから、それに先輩だから、批判するつもりはない。そのぶん、おいそこの芸人、てめえに不満をぶつけるわけだが、外国で評判だったとか、何賞を貰ったとか(なにがカンヌの最優秀賞だい!) そんな過去の栄光、今晩の出来を見れば、嘘八百も同然だ。おそらく東洋の神秘とかで過剰な評価を受けたに違いない。いや、かつてはそれだけの評価を受けてもいいような神秘の光暈が棚引いていたこともあったかも知れないと認めてもいい。でも今晩のものを見る限り、何度でも言うが、そんなものの痕跡さえ窺うことができないのだ。
舞台の後、五分の休みがあり、その後出演者のお話があるという。てめえのゴタクなど聞きたくもねーや。妻と二人、灯りがついてすぐ、憤然として帰ってきた。導入部の一分で、これはちとおかしいぞ、と思いながら、まさかまさかと最後までいたことが悔しくてならない。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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