もう一度「君仙子展」を見たいと言うバッパさんを連れて昼前小高に行く。途中スーパーに寄ってバッパさんのためにおにぎりを買う。実は小高に美味しいラーメン屋さんがあると聞いていたので、お昼はそこで三人で食べることにしていたのに、急に1時からの催し物(琴?)も見たいと言い出し、それで急遽出発を早めて家を出た。ところが後部座席でおにぎりを食べ終わったバッパさん、「あーあラーメン食いたかった」とのたもう。おいおいそれはないだろう、なんでそんな嫌味をゲップしながら言うだよ。
帰りは知ってる人に送ってもらうから、と言うバッパさんを浮舟会館前で下ろして、先ずは腹ごしらえ。美味しいと評判のF食堂に行く。二人とももやしラーメンを注文。出てきた山盛りの、辛子がいっぱい入ったラーメン、なるほど美味しい。二人とも汗をかきながら食べた。昼時でもあったが、小さな町なのに次々と客が入ってきて順番待ちをしている人もいる。
そのあと予定通り、親戚廻りをした。まずは本家の英俊さんのところ。北海道から移住してきた当初の半年間、お世話になった隠居部屋、鉤の手に繋がる当住(トージ)。昔あった外便所の側の柘榴の木までがそのままだ。そのあと街道筋のSちゃんのところ。長男とそのお嫁さんも挨拶に出てこられた。満州から引き揚げて北海道に向かう途中、確か夜になってからこの家を訪ねたときのことをぼんやり覚えている。年上の男の子たちが大勢いて、兄弟喧嘩でだれかが鼻血を出したことまで思い出した。
さて最後はよっちゃんのところ、つまりうちのバッパさんの従妹の芳子さんの家に行く。従妹なのに昔からおっとりしたよっちゃんももうりっぱなお婆ちゃん。ちょうど近くに住む娘のR子ちゃんが来ていた。うちと同じ男と女の双子のR子ちゃんも娘夫婦と一緒に暮していて今は隠居の身という。えーっ、R子ちゃんが……んだべー、だってたーちゃん(これ私の愛称)より三つしか若くねーんだどー……
血の繋がった人たちがこんなにかたまっている場所に来ると、血がざわざわして、懐かしいような、切ないような気持になるのは何故だろう。
悪いけどバッパさんと来たらこうはいかなかっただろう。なにせバッパさん、他人の家に行っても仕切ろうとするんだもの。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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