体感(cenestesia)

この二日間、ウナムーノの「充実中の充実」を読み通そうと思いながら、まだそれを果たせないでいる。忙しいからだろうか。いや、作ろうと思えば時間などいくらでも作ることはできた。しかし一昨夜、いやその前の夜になるか、それを読み始めたとたん、まるで深い霧の中に迷い入ったような感じに襲われたのである。恥ずかしいことに、内容の理解以前に、文章の理解、つまり文章の論理構造そのものの理解ができなくなっていたのだ。
 かつてウナムーノは、難解だが、その言わんとしていることは分ったつもりになっていた。しかし今は言葉そのものに撥ね返されるといった感じである。これはヤバイことになっている。よくも訳したものだ。理解していたのだろうか。
 確かに訳文そのものがまずいということもあるだろう。例えば題名からして、分りにくい。これは「空の空なるかな、すべては空し」の、その「空」の部分に「充実」という言葉があるのだから、「充実の充実なるかな…」となるのだが、それでは日本語にならないので、「充実中の充実」としたのだろうが、でもなんとか別の訳し方があるのでは?
 ともあれ、今夜ようやく読み通せそうなので、続きは明日書くことにする。そのとき題名「体感」の意味も説明しよう。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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