再訪なんて書いたが、もちろんブライトンになど行ったことはない。最近見直した二つの映画と、そして同じく最近手に入れた一冊の小説の舞台が、偶然にもロンドンの南約80キロにあるイギリス最大の海浜保養地ブライトンだったので、それについて少し書いてみようかな、と思ったのである。二つの映画とは1960年のイギリス映画『寄席芸人』、1986年の、同じくイギリス映画『モナリザ』、そして小説はグレアム・グリーンの『ブライトン・ロック』である。
つまりブライトンをめぐって三題噺風にまとめてみようと思ったのであるが、グリーンの小説で躓いてしまった。原作はすでにペンギン・ブックスで持っていたのであるが、最近のアマゾン散策で邦訳全集のものも手に入れた。さてそこで、冒頭、登場人物の一人ヘイルがパレス桟橋で手すりに寄りかかりながら観光客の群れを眺めている箇所はこうなっている。
「…群集は二人ずつ並んで、まるでねじれた針金がほどけるように次々と通りすぎて行く。だれもかれも一種まじめくさった、そのくせ今日一日は遊びくらそうと覚悟を決めたみたいな陽気であった…」
つまりその訳文の「ねじれた針金がほどけるように次々と…」という箇所に躓いてしまったのである。グリーンが多用する比喩(直喩、隠喩、換喩など正確を期せば難しいので、とりあえずは比喩とだけ言っておく)はいずれも適切で鋭いが、この箇所はどうもしっくり来ないのである。それで数日前まで確かに机の側にあった原著を探したのであるが見つからず、もしかして下に片付けたのかと二回ほど書庫まで行ってみたのだが、今のところまだ見つからないのだ。たいした問題ではないので、気にしなくてもいいのだが、今回はなぜかこだわってしまい、三題噺へと進むことができないのである。
なにもシンデレラじゃあるまいし、この文章を十二時までアップしなくてもいいのであるが、やっと三日前から再開した手前、なにがなんでも今日中に三題噺の一つだけでも片付けておきたかったのであるが、どうも無理のようだ。明日改めて書くつもりだが…、