英語弁論大会(一)

今日の午後、急に思い立って寝室に放置されていたアルバム類の整理をしていたら、美子の古いスクラップ・ブックが出た来た。中を見ると、中学時代、美子が英語弁論大会に出たときの新聞記事などが貼られていた。筆跡から推して、十年ほど前、ちょうど私の誕生日に亡くなった義父源一の作ったスクラップらしい。とりあえず二つの記事を写してみる。これでみると、中学二年生のときと三年生のときの二回、東北大会に出場して優勝したらしい。そのあと全国大会へと進むのだが、二年生のときの記事は無いので、そのときは入賞しなかったらしいが、二回目の全国大会では……。
 もはや本人の口から当時のことが語られることはないので、孫たちのためにもここに記録しておく。なお二回目の全国大会での成績は明日のお楽しみ(あゝおかげさまで、二日間自分の文章を書かなくても良いので、大いに助かる)。


「福島民報」、昭和32年(1957年)10月29日(火曜日)


三本木さん(桜の聖母)一位 中学英語弁論大会晴れの全国大会へ

 桜の聖母学院中学二年生三本木美子さん(十三)は二十七日山形県酒田市西高校講堂で行われた中学校全国英語弁論大会東北予選女子の部で一位となり、十一月十七日東京で行われる全国大会に出場し各地区予選を経た強豪と高松宮杯を争うことになった。
 中学弁論大会で中央のヒノキ舞台に出るのは福島県では初めてなので聖母学院では英語担当のシスター・ドロテ先生をはじめレジナ・マリ学長、高橋紀子先生などが学校の名誉のためにも全国大会ではぜひ優勝させたい。学院では小学校の二年生から英語を指導しているが、ようやくその成果が現れてこんなにうれしいことはないとニコニコ顔だった。

  
「福島民報」、昭和33年(1958年)10月27日(月曜日)


中学の部 三本木さん(桜の聖母)一位 東北六県英語弁論大会開く

 第六回東北六県中学、高校英語弁論大会は二十六日午前九時から会津若松市会津女子高校講堂に各県から中学、高校各一名ずつの代表が参加して開かれた。宮沢東北六県英語教育連絡協会長のあいさつがあって中学校の部青森県弘前学院聖愛中学校工藤良子さんから熱弁の火ぶたを切った。
 三時間余にわたり十二名の少年少女が自分の体験を通して「青少年の不良化について」「犬に骨を与えよ」など堂々の論陣を張り、野々山会津短大教授ら各県の審査員をはじめ、会場につめかけた中学、高校生たちを感心させていた。
 審査の結果、中学校の部では英語の勉強のために教室に二匹の犬を飼い、クラスメートが二組に別れてそれぞれ一匹ずつの犬を受持ち、英語の勉強で成績の良かった組がほうびに犬に餌を与えるという学校での英語の勉強状況を題材とした福島市桜の聖母中等部三本木美子さん=写真=の「犬に骨を与えよ」が一位、また高校の部では山形県酒田東高校工藤義昭君の「寺の屋根」が一位となった。
 野々山審査員長の話「第一回大会のころに比べるとグンとレベルが上っている。とくに中学校の部で優勝した三本木さんは発音から何から高校生にまけないくらいりっぱなものだった」と感想を語っていた。
 中学校の部で優勝した桜の聖母学院三年生三本木美子さんの話「先生方のご指導のおかげです。近く行われる東京大会でも一生懸命がんばって来ます。いまはうれしさで一ぱいです」

美子と戦利品
中高を通じて、ママは英語弁論大会荒らし(?)だったとさ。東北六県は言うに及ばず、三笠宮杯など全国大会でも名を馳せたとさ、めでたしめでたし。
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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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