以前ここに書いたことがあると思うが、撫順の捕虜収容所からの帰還兵たちが作っている中国帰還者連絡協議会(略して中帰連)の季刊誌が届いた。いや正確に言うともう一週間ほど前に届いていたのを、机脇の雑多な書類の中に紛れ込んでいたのを今日見つけた。一九九七年に創刊され今回のものは第48号である。表紙裏の「発刊の趣旨」にはこう書かれている。
「…戦後五〇年を期し<過去の戦争の反省と未来の平和への決議表明>を国会で行なう案文が、自民党右派の工作で骨抜きに…これを背景に<自由主義史観>を提唱する藤岡信勝東大教授一派は、従軍慰安婦問題を教科書から削除する活動を始め、<新しい歴史教科書をつくる会>を発足させ…この一派はわが中帰連の出版物…を<自虐史観>の根源と見なし、…<彼らの証言は脅迫によるものでウソである>などと主張…この挑戦的な暴言を、私たちは手をこまねいて黙認することはできません。私たちは…数奇な共通体験から得た強い反省に基づいて、…反戦平和と日中友好の実践を続けてきました。そして現在、最も若い会員でも既に七十歳半ばに達し…故に、あえてここに季刊『中帰連』の刊行を決断しました…」
この時から会員の老齢化はさらに進んだわけだが、昨年から若い賛同者が編集に加わったようだ。毎号すべてに目を通すわけではないが、できれば忘れたい自分たちのにがく苦しい過去と真摯に向き合っているこれら元皇軍兵士たちの文章に毎回頭が下がる思いである。
この時期、歳末助け合い運動など寄付のお願いが増えるが、経済的にまだ余裕があった頃はユニセフとか里親運動とかにわずかながら寄付していたが、最近は町内会経由の諸寄付とグリーンピースだけになっている。しかしこのグリーンピースは反捕鯨の運動など、ちょっと待てよ、と言いたくなるような活動にまで手を伸ばしているようだ。正直よく分からない問題である。しかし非常に素朴に考えるなら、乱獲に反対するならともかく、鯨が可愛いからとか、知能指数が高い(?)からとかで反捕鯨を主張するのはちとおかしいのでは、とは思っている。可愛いウシちゃんや本当は清潔好きのブタちゃんをばくばく食いながら反捕鯨を言うのは大いなる矛盾のはずだ。
いや言いたかったのは、グリーンピースに寄付するなら、ほとんどボランティアで刊行を続けている中帰連にカンパする方が理屈に合っていると考えたのだ。それで今日の午後、思い立って郵貯銀行からの自動振込みのキャンセル手続きをしたのである。八王子時代に作った通帳だから、ついでに住所変更もしてください、ということで、小一時間ほどかかってしまった。その間、心配で一度駐車場に美子の様子を見に行ったが、おとなしく待っていてくれた。グリーンピースの毎月の振込みと言っても、恥ずかしいほどの小額だが、その一年分の半分くらいを中帰連にカンパしようか。