これは奇怪なり!

良寛さんのことが気になりだしたのがきっかけで、このところ山頭火や牧水の古本を取り寄せている。毎日、ほとんど同じ線上を歩き、そしてほとんど変わらぬことを繰り返していることへの反動だろうか。漂泊の詩人に憧れているのかも知れない。良寛をはじめ、いずれも名前だけ知ってはいるが、実際の作品を読んだことがなかった。いずれそのうち、何がしかの感想を述べることになろう。
 しかし今日の話題は、内容とはまったく関係のない瑣末なこと、或る出版社と文庫のことである。『牧水紀行文集』は古い改造文庫の一冊である。初版は昭和八年で、今日届いたのは昭和十四年の十五刷である。届いたとき、おやっと思った。てっきりベージュ色の布表紙を期待していたのに紙表紙だったからである。というのは今まで出会った改造文庫二冊、すなわちばっぱさんがむかし読んだらしい思想関係のものも、最近手に入れたばかりの一冊も、いずれも布表紙だったからである。
 この際だから改造社という出版社のことや改造文庫のことを調べようと、ウィキペディアの記事を印刷しようとしたのだが、あれあれ印刷機は正常に動くのだが、インクで印字されていない。念のためにカラー写真を印刷すると、こちらはきちんと印刷される。ということは黒インクが急に無くなったのか。それにしては突然はおかしい。これも念のため黒インクを補充してみたが、やはり印字されない。
 説明書を読むと、ノズルが汚れている場合はパターン印刷をしてみろ、と書いてある。やってみた。カラーの方は印刷されるが、やはり黒インクのパターンは印刷されない。おかしい。
 実はそのすぐ前にも、変なことがあった。といってこちらの方は、私に原因があるのだが。つまりばっぱさんが読んだという改造文庫を下に探しに行ったのだがどうしても見つからない。それならと、最近買った改造文庫は何だったろうとしきりに思い出そうとするのだが、これがどうしても出てこないのだ。確かに布表紙の感触が記憶に残っており、文庫もかなり厚手のものだったはずなのに、なんとしてもそれが何という本だったかが思い出せないのだ。これも探し回ったのだがどこにも無いのだ。
 今夜はひとまずあきらめて、明日、いや今日、改めて探すなり、修繕するなりしよう。頭を切り替えて、寝に付くことができるかどうか。あーあ馬鹿みたい!

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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