郵便局にレターパック350を出しに行った。厚さ制限3センチであることは重々承知していた。今回の私のは2.7センチ。ところが窓口の中年(もっと若い? 女性の年齢を当てることは難しい、そんな目でじっくり見ないので)の局員、例の真ん中が3センチの空洞になっている物差しで、私のレターパックをくぐらせている。思わず言いました、「プロだったら手に持った時点で規格内だくらい見当つけろい!(「ろい」とはまさか言いませんでしたが)。長いあいだ郵便物を配達しなかったくせに、ミリ単位のちっちぇー仕事はしっかりやるだーっ!」
実はこれまでにもレターパックをめぐっては日本郵便とのあいだに何度か嫌な経験をしましたが、それは省略して、ごく最近のことを言えば、震災後の、特に20キロから30キロの愚かな輪切りによって、日本郵便は長いあいだ郵便物を溜めに溜め込んで配達しない時期がありました。総務省通達とやらを国営(いや今は民営でしたか?)らしく忠実に守ったわけでしょう。しかし客観的状況(放射線量など)が一切変化ないのに、いつのまにか黒ネコや飛脚に合わせてひっそりと郵便業務を再開したのはいいのですが、それについては私の知る限りこれまでまったく事情説明も、ましてや公の謝罪もしてきませんでした。
ともかく普通の商店だったら、いつもやってくる常連さんに「いい天気ですね、いつも精が出ますね」くらいの挨拶をするんだろうが、昔のお役所(つまり国営という意味です)仕事の流儀は一切変化なし。貢物の米俵の大きさ、重さを量る、査定することばかり重視しているお役人そっくり。1ミリ2ミリオーバーして、いったいどれだけの損害が、不都合が生じます?
たとえば「ゆうパック」のように長さや重さによって料金が変わるものなら、窓口で計るのは当然。しかしどう見ても3センチを大幅に超えるもの以外は、笑顔で受けとってください。そんなケチ臭いことを言うなら、たとえば配達料込みの通常料金を取りながら、局まで取りに来させたり、北海道の従妹の場合のように、現金書留で送金したにも関わらず後日配達できませんでした、と突っ返しておきながら、切手料金をいっさい弁償しなかったケースなど、どう考えてるんでしょうねー。こういうのを世間では「やらずぶったくり」と言うんですがねー。
そんないやーな気持ちで夜ノ森公園に出かけましたです、はい。そこでも面白くないことが起こりました。坂道を上がっていくと、中学生らしき男の子たちがロータリーを挟んで打撃練習をしてました。軟式ボールでしたが、当たれば痛いです。私たちが石のベンチに近づいていってもいっかな止めようとはしません。そこで一喝、「こらあーっ、こんなところで野球するなーっ、少なくとも人が近づいたら止めろーっ!」
福島や郡山と違って、小学校の校庭は使えるはず。いくら震災後でも公園使用のルールくらい守ってほしい。近くにはいい大人が何人もベンチに坐っていながら、だれも注意しなかったようだ。
最後にもう一つ。帰宅して間もなく東京の友人から電話がかかってきた。例の「週刊現代」の記事を読んだという。そこまではいいのだが、政府や東電のいい加減さをまくし立てる。「いやいや僕もそんなことはイヤというほど分かってるよ。でもねー、一応私はその被害者なんですよ」。すると彼、「じゃだれに向かって言えばいいんだ!」と逆切れ遊ばされた。
この最後がいちばん辛い。ふだんはいい人なのに、政府や東電に対する不満や怒り、それにこの異常な暑さで、彼の思考能力もぼっこわれて(相馬弁で壊れるの意)しまったのだろう。
かくのごとく、今年の夏は暑さだけでなく、日本中に溜まりに溜まったストレスの行き場がない長―い夏になりそうですよ。なーに最初の二つの事象(とは一時期よう使われた言葉ですが)は、私自身が湯沸かし器の蓋を常時半開きにしておけば済むんですが、日本中に溜まったストレスの方は、これ私の力ではなんともなりませんです、はい。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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私も、ぼっこわれそう!
昨日、江原順とか言う人物を知りました。
生き方も、シュールな人。
シュールレアリズムって、
16世紀のスペインの画家たちに
淵源があるそうですね・・
ブリューゲル、ボッシュ・・知りませんでした。
先生の広げた波紋、私には激浪です。
泳ぎきれるか・・・
塵(驚)