アームカバー

本当は今日お話しようと思ったのは、先日、貞房文庫の埴谷雄高の項で見つけた『精神のリレー』(河出書房新社、1976年)という本についてだったが、あまりに重要なテーマなので、もう少し読み込んでからにする。とは思わせぶりな言い方だが、実はこの本、埴谷雄高、島尾敏雄、小川国夫、秋山駿、真継伸彦、小田実という六人の作家、評論家の講演集である。ところどころ線が引かれているところを見ると、一度は読んだはずだが、例のようにほとんど記憶から消えていた。重要なテーマと言ったわけは、登壇する六人のうち、前の三人こそ、われわれが、といってまだわが同志には話していないが、この南相馬から発信すべきテーマ、すなわち南相馬と現代文学というテーマのまさにドンピシャリの顔ぶれだということである。自分自身が新しい視点から読み直すことも必要だが、同志にもしっかり理解してもらうには、さらにテキストとして同じ本を購入すべきでは、と考え、一昨日アマゾンで例の破壊された価格で見つかった2冊を注文し、本日そのうちの一冊が到着。明日あたり取り合えず西内さんに渡すつもりだが、前述したように、先ずは私が新たな視点から読み直すことが必要である。
 いやこんな前口上をだらだら書いたのは、今日の午後届いたある人から(他人ではなくニクシンから)の寒中見舞いのハガキに実に腹立たしいことが書かれていたので、さっそく電話で抗議。喧嘩腰で発言撤回を要求したりして、かなり精神的なストレスが溜まったのだが、しかし美子が今日は三度とも、特に夕食時、実に順調に食べてくれたのでストレスなどどこかに飛んでいってしまった。しかもその同じ午後の便の中に入っていた,田村市のSさんから届いた便利な贈り物について、とても書きたくなったのだ。このあたりシッチャカメッチャカ、やはり例のはがきの余韻が尾を引いているのかも。
 さてその贈り物だがいわゆる腕カバーというもの。むかしよく事務員などが腕にしていたやつ。昔風に言うなら手甲(てこう、もしくはてっこう)である。医者であるご主人が洗い物などをする時に使っていて便利そうだから、先生もどうぞ、と送ってくださったのだ。包み紙をみると。「ふぁせるたむら 生産者・渡辺イエ子、産地・田村市」となっている。イエ子さん、名前から判断するとたぶんおばあさんではないかな。紺地にウサギ(犬かな?)のアップリケが刺繍されていて、可愛らしいし暖かそう。
 いやこれは助かります。寒い台所に立って、茶碗など洗う時、腕まくりするのは寒いし、かと言ってまくらないと袖口が濡れるし、と困っていたので、明日からさっそく使います。いや洗い物をする時だけでなく、オシメ交換をするときも、またパソコンに向かうときも、実に重宝です。もう手放せません。値札には350円となってましたが、Sさん、これはその何十倍もの価値があります。たぶんモノディアロゴスを時々は読んでくださっていると思うので、この場を借りてお礼申し上げます。あゝこれであの寒中見舞ハガキのもやもやが、いつの間にか完全に消えてしまいました。ありがとう。

 では「精神のリレー」については、また明日あたり(?)書きます。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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