滑舌 or 活舌?

もちろんこちらが歳相応に、いや歳以上に、耳が遠くなってきたからではある。しかし最近大変気になるのは、アナウンサーはじめ日本人全体の滑舌がひどく悪くなってきたことである。カツゼツは活舌とも書くが、むしろこの方が正確である。つまりアナウンサーなどが早口言葉などの反復練習で口の動きを滑らかにするのはいいが、滑らになっている、と思われるからだ。
 その意味では、いつのまにかテレビ界(映画界?)の大御所にまで成り上がったタケシ(本名はなんでしたっけ?)など目も、いや耳も当てられない日本語をしゃべり散らしてる。本人にその自覚がないのだろうが、聴き取りにくい言葉をまるで涎のように垂れ流している。
 学校で明確明瞭な発音の仕方など習った覚えはないが、でもむかしは素読という訓練、つまり内容の理解は二の次にして、文字だけを大きく声に出して読むことを教えられたそうだが、いま学校ではどうなっているのだろう? 読めればいい、分かればいい、で正しく発語・発音することなど誰も気にしてないのでは?
 先日も書いたと思うが、最近、いけ図々しい不動産屋からの電話に音を上げて普段は留守電にセットしているが、もちろん私的な電話もかかってくる。しかしほとんどの場合、その人の自己紹介の言葉が聞き取れない。自分の名前くらいゆっくり明瞭に発音してもらいたいのだが。
 最初に言ったように、これは八割方は当方の耳のせいではあろうが、しかし耳に爽やかなアーティクレーションの言葉は絶えて久しくなったとしか思えてならないのだ。学校に期待できないなら、世のお母さん方、ご自分のお子さんの発語・発音を小さいときからどうぞ指導したやってくださいな。
 耳に爽やかな、そしてアーティキュレーションの綺麗な日本語を話す人と言えば、さてだれでしょう? もちろんあの渥美清の寅次郎さんでーす。
 さあ皆さんも、お子さんだけでなく、あなたご自身、今日から綺麗な日本語をしゃべる努力をしてください。私は喜寿になりましたが、常に発音明瞭を心がけてます。そこんところどうぞよろしく。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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滑舌 or 活舌? への1件のコメント

  1. 宮崎オヤジ のコメント:

    あまりに久しぶりの訪問なので、つい古い記事にコメントさせていただきます。
    しかも主題とはあまり関係ない、留守電の自己紹介のことです。
    『ぴーという音がなりやんだら伝言をお入れください』と言われて、ピーが止まった瞬間、突然マイクを突きつけられたような気分になり、しどろもどろになりながら名乗るせいで、聞き取りにくいのだと思います。私がいつもそうなるもので、つい。

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