女物のズボン?

着替えはいつも二階の居間に積み重ねられている洗濯済みの衣類の中から適当なものを選んで穿いたり着たりしているが、この数日美子のズボン類を穿いている。自分のものを山の中から探すのが面倒で、つい上の方にあるものを穿いているわけだが、先日はトレーナーのズボン、そして昨夜は風呂上りに見つけたジーパンである。まさか穿けないだろうと思ったら、何と胴回りもゆったりしていて、太っ腹(?)の私にも余裕で穿けたのである。
 美子がそんなに太っていたはずもないのだが、胴回りがゴムになっているので適当に穿いていたのだろう。ジーパンに女物はない(と思う)ので私には好都合。つまりトレーナーには「社会の窓」がなかったわけだ。思わず「社会の窓」などと言ってしまったが、これ完全に死語だろう。でもなぜそう言ったのかが気になり、ネットで調べるとおおむねこんな風に出ていた。

 「この言葉は、1948年から1960年にかけて当時のNHKラジオで放送されていた番組の1つ『社会の窓』がその由来。この番組自体が社会の裏側を探るといった内容のものだった。 つまり、当たり前では見えない、あるいは普段は見られないものが見える状態、などといった意味で、男性用ズボンの前部分に装着されている股間部チャックなどが、そうした言い方をされるようになった。」

 ネットなど今では功罪相半ばするというより、むしろ罪の方がはるかに肥大化してしまったが、でも辞書にも載っていない言葉、その意味を探ろうと思えば、下手をすると何十人以上もの人に聞かなければ分からないものが、ネット検索で一瞬のうちに答えが見つかる。
 いま横で気持ち良さそうにまどろんでいる美子のために、ばっぱさんが残した「昭和の流行歌」という全20巻のカセットテープを取っ替え引っ替え流しているが、ちょうど(嘘じゃありませんよ)高倉健の「唐獅子牡丹」になった。そして先ほど出た「コカン」に関連して馬鹿話を書いたことを思い出したのである。つまり高倉健が唄う「唐獅子牡丹」の一か所がどうしても「男の股間」に聞こえたという話。皆さんの方にはそれがあるのかどうか分からないが、私の画面には右上に検索エンジンがあり、それで「男のコカン」で検索すると、立ちどころに2015年9月22日に「男のコカン?」という題で書いているのが見つかる,という具合。
 話がどんどん横道に逸れてしまったが、といってもともと女物のズボンを穿いている男の話だったわけで、自分でも馬鹿らしくなってきたのでこの辺で退散します。お後がよろしいようで、♪♫

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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女物のズボン? への2件のフィードバック

  1. 佐々木あずさ のコメント:

    佐々木孝先生
    思わぬ展開に笑ってしまいました。美子奥様も、くすっと笑っておられるはず(^^♪
    先生が解説してくださった十勝坊主。今頃思いだしました。今、その十勝坊主の調査が萩が丘で行われているとのこと。先生の祖父母さまが暮らしておられたところでしたね。きっと、たーちゃんも従兄弟たちと走りまわったところにボコボコとあったのでは…。
    さて、今日は寄りあい処呑空庵に23名が参加。沖縄の阿波根昌鴻さんの朗読劇と高江のドキュメンタリーをスクリーン上映しました。脳こうそくの後遺症を持つ方や車いすを利用する方をはじめ、十勝管内はもとより、斜里からも参加いただきました。法王が拡散している、というよりは、先生が拡散した「弟を背負った男の子」の写真と先生のことを紹介しました(毎回、紹介しています)。十勝毎日新聞の記者さんにも先生との顛末をお伝えしました。なんたって、勝毎が一面に先生の記事を載せたことがきっかけなのですから。すべての勝毎記者に、先生のことを知ってもらいたいわけです。
    十勝の桜は一気に満開です。奥さまによろしくお伝えください。

  2. 阿部修義 のコメント:

     美子奥様のトレーナーのズボンを利用されているお話しを聞いて、先生らしいのかなと思いました。何でも完璧を望む考え方に真っ向から反対はしませんが、私も、ある意味、あまり形式に囚われない60点主義で生活するように心がけています。不足分の40点は、時間が埋めてくれるという考え方です。高倉健の「唐獅子牡丹」をユーチューブで聴きました。私には「男の世界」としか聞こえませんが、「男のコカン」と聞こえても、それはそれで良いのではと思います。歌詞の中に「六区」とあって、意味が分からずネットで検索しましたら浅草の歓楽街を指しているようです。美子奥様もお元気そうで何よりです。「社会の窓」とは、誰が考えたのか知りませんが、実にうまい表現だと思います。最近マスコミを騒がせているセクハラ問題、まさに、「社会の窓」の閉め忘れが原因のようですね(笑)

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