いつの間にか

気がついてみたら、このところ「日録」がほぼ千字になっている。ときにオーバーして何回か字を削らなくてはならない。つまりこれは、一昨年夏から昨年夏までちょうど一年間続けた「モノディアロゴス」形式に戻っている、ということである。そして無意識裡に、書き方もモノディアロゴス方式になっている場合がある。といって、自分の中ではっきり区別ができているわけではない。いや、もともとはっきり区別して始めたものでもなかった。でもまた始めたいのであろうか?いや、いまはその元気はない。ノルマとしてなら、おそらく書く気力は湧いてこないであろう。いましばらく自然の流れにまかせておこう。
 ところで肝心の『モノディアロゴス』出版の方だが、このところ行路社のK氏から連絡がぴたりと途絶えている。K氏のことだから、忘れているわけではなく、必ずや出版に向けて奮闘していると信じてはいるのだが…気楽に問い合わせた方がいいのかも知れないが、問い合わせるのがちょっぴり怖い(?)のかも知れない。とにかくもう少し待ってみよう。
 話は変わるが(日録なので変わって当然なのだ)、今日の集積所回収は紙類。それで広告紙を袋に詰めて持っていったのだが(新聞紙はクッキーのオシメをくるむのに必要だから一枚も入っていない)集積所近くの道路を、背広姿の一人のサラリーマン(三〇代後半か?)がビニール袋を片手に、もう一方の手には火挟みのようなものを持ってゴミを拾っているのだ。目が合って互いに軽く会釈したが、偉い人もいるもんだ。近所のゴミ当番の人だろうか、それとも「街をきれいにしよう」運動かなにかの会員なのだろうか。それともどっかの宗教団体の信者さん?勝手な言い草だけど、そのいずれでもなく、まったくの個人的行為だったらなおのこと素晴らしい。心からの、掛け値なしの尊敬に値する。
 そして私自身がそのような市民の一人に、無理や気負いもなく成りおおせるとき、あゝそのときこそ街はきれいになり、日本はまともな国になり、そして世界は平和になる。それこそが、つまり私自身がそのような人になることが、いちばん難しいんだよなー。いや、まったく。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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