五泊六日の夏休みを終えて帰京する娘を、いつもの通りプラットホームまで見送る。上り普通電車に乗るのか、若いお母さんに連れられた五歳と三歳くらいの可愛い男の子がやってきた。弟のことをお兄ちゃんに任せて、母親は誰かを探しに行くのか、階段の方に行ってしまう。その間、荷物と弟に目配りしているお兄ちゃんの健気な様子を、こちらは三人で感心して見ている。すると、階段から、この子たちの妹と思しき二歳児くらいの洟をたらした元気な女の子が、おばあちゃんと一緒に降りてきて合流。今どき珍しい、ほとんど年子のような三人きょうだい。
いつかそのうち、孫を連れて里帰りした娘を、こうやって見送る日のことをつい考えてしまう。心配で心配でたまらないだろうな、と今から胸が痛くなる。
ところで今朝読んでいた志賀直哉の『襖』という短編に、次のような子供の描写が出てくる。ある宿に隣り合わせに泊まった二組の家族の子供たちの生態である。
「子供同士はそんな事がなくても直ぐ友達になるものだけれど、吾々が来た翌朝、隣で唄の稽古が始まると僕の妹は直ぐ縁側へ出て、後手に欄干に倚りかかって、背をすりながら静かに横あるきをして隣を覗きに行った」
とくに「背をすりながら…」という描写は、まさに予想していた通りの子供のしぐさをものの見事に、しかも正確に写しとっており、志賀直哉の凄さを再確認した。それにしても、こう子供のことばかり気にかかるというのも、こちらが歳をとったということか。