夜八時から衛星第二の『一人息子』を観た。昭和11年の小津安二郎作品である。もしかすると小津の第一作か。しかしなんというゆったりした時間の流れ。またなんという善意の人たちであることか。昔はたぶんこのスピードにいらいらしたと思うが、今はむしろ心地よい。
小津の作品を観るといつも感じる日本人の、というより人間の品格・品位(decencia)を今日の作品にも感じた。徹底的に善意の人であることからおのずと醸し出される上品さである。昭和11年の、貧しい日本の、貧しい小市民の、しかしなんという豊かな人間性なんだろう。
飯田蝶子の母親も良かったが、主人公ではなかったが若い笠智衆もすでにして笠智衆だった。たぶん何夜か小津作品が放映されるらしい。忘れずに録画しておこう。
佐々木 孝 について
佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)