嗚呼、糞みそ一緒!

沖縄在住のある人から、翁長氏当選の喜びを大きく伝える17日付けの「琉球新報」と「沖縄タイムス」の、それぞれ二面ぶっ通しの紙面写真がメールで送られてきた。
 私の方からの次のようなメールに応えてのものである。

「気にはなってましたが、今朝の新聞で翁長氏当選のことを知り、喜んでいます。普天間基地周辺のみなさんは、ある意味で己れを犠牲にしても、の気持ちがあったと思いますが、でも国に対するノーの意思表示が明確になって喜んでいます。県外移設・基地撤廃と今後の道のりは遠く見通しがつきませんが、でもそれに向けての第一歩であることは間違いありません。
 ともあれ、おめでとう!  政治音痴の老サムライより」

 彼からの返事は以下の通り。

「翁長さんが10万票差をつけての当選、本当に嬉しかったのですが、これからさらに厳しい道が続くというのは、投票した県民誰もが思っています。普天間基地周辺の人たちは自己犠牲などという気持ちはあまりありませんよ(笑)。
 とにかく、沖縄はもう米軍基地収入で食べているわけではないし、国のあまりにも理不尽な押しつけと多くの日本国民の関心のなさ、そして70年間何も変わらない構造的差別に、日米安保条約に関するスタンスはとりあえず譲歩して保革のイデオロギーを超えての、ウチナーンチュの自己存在をかけての歴史的な選挙でした。
 お上の大本営発表機関と化した某国営放送局は、昨日の全国ニュースではみごとに沖縄県知事選に関して無視していましたが。あきれるばかりです。」

 実はこのごろめったにテレビを見ないので、某国営(正確には公共と言うべきだろうが実質的には国営)放送が今回の選挙結果をどのように伝えたか確かめていないが、新聞各紙が実におざなりの報道しかしていなかったことから考えると、彼の言うとおり無視に近い扱いだったのだろう。温度差と言うだけではすまされない由々しくも嘆かわしい報道姿勢である。
 菅官房長官の「工事は粛々と進める」と言う談話の何と空々しく響くことか。「粛々と」と言う言葉が過去どれほど汚い使われ方をしてきたか、全く何の反省もないままの鈍感無恥の発言である。それがいかに非人間的で、責任回避の表現であるかが自覚されていない驚くべき厚顔さである。
 ついでに言うと、この「粛々と」と双璧をなす表現、虫唾が走るほど嫌いな表現にいかがなものでしょうというのがある。先日も私の生まれ故郷である帯広選出の道議が「アイヌを先住民族というのはいかがなものでしょう」などとほざきやがった。
 いつもの通り話は突然変わるが、実はこのところ美子の介護態勢、つまり排便の介護の仕方に関して、ケアマネージャーからの新たな提案があり、近日中に訪問看護婦さんを交えて相談することになっていて、少々気持ちが落ち着かない。簡単に言えば、これから寒さに向かう折、トイレの便器に座らせての排便介護はやめて、ヘルパーさんによる日に一度のオムツ交換、三日に一度の看護婦さんによる摘便、必要に応じての浣腸、へと方向転換する話が進んでいる。
 確かに一切の意志表示ができず、またほとんど体を動かすことのできない美子に、毎回浣腸に拠らなければならない便器での排便は、ケアマネージャーの心配するとおり限界に来ているのかも知れない。
 こうして美子の介護も新たな局面を迎えるのか、と思うと先行きの不安が頭を過ぎるが、しかし負けてはいられない。このモノディアロゴスを通じて親しい友人になった大阪のJ. Tさん、東京のN. Aさん、T. Mさん、そしてE. Mさん、いずれもそれぞれ介護を必要とするお母様のため日々健闘しておられる。先日もT. Mさんが私の近況を知って、「我がおふくろの状態も相当のことになってきました。これからが正念場でしょう。敗けまへんでえ。兄貴いー!! 熱烈なエールを送ります」とメールしてきた。つまりいつの間にか介護者同盟の輪が広がっている。
 ついでだから、現在の私のスケジュールを簡単にご紹介しよう。

  • 朝八時半、おむつ交換をしてから車椅子に。そして朝食。
    (月曜と金曜は十時からお風呂の出張サービスを受ける)。
  • 十二時半ごろ昼食。そのあとベッドに移し、おむつ交換して昼寝。
  • 四時 車椅子に移して、四時半からのトイレ・サービスを受ける。
  • 六時過ぎ 夕食。 そのあと15分~30分、ふくらはぎと肩に電気あんまをかける。
  • 十一時半ごろ、ベッドに移し、おむつ交換して寝せる。

 ケアマネージャーから、必要でしたら食事の介護もヘルパーさんに頼めますよ、と言われたが、それだけは謝辞した。なぜなら最近は咀嚼はしっかりするがなかなか口を開けず、呑み込むのも遅いので、指を入れて上唇と歯茎のあいだに溜まった食べ物をかき出し優しく口の中に押し込まなければならず、食事介護はそれぞれたっぷり一時間半はかかるからだ。時間で動かなければならないヘルパーさんには決して頼めない仕事である。
 いま予想される新しい排便ケア態勢によっても、起床時、お昼寝前、就寝前の三回のおむつ交換は必要なので、実質的に私自身の負担は一切軽減されないのは一向に構わないが、しかし大便をオムツにしている可能性があって、その分仕事が増えることが予想される。 
 おっとここまで書いてきたが、政治問題と排便ケアの話を一緒にするな、つまり糞みそ一緒にするな、とお叱りを受けるかも知れない。しかしそう言う人がいれば、貞房氏の人生哲学をまったく理解していないわけだ。はっきり言えば、国が滅びようが世界が壊滅しようが、美子の排便が滞りなく行われるのであればOK、糞みそ一緒? もちろんです。私がスペイン思想に惹かれる重要な理由の一つは、世界の言語の中で唯一、終末論とスカトロジーを完全に同一視しているから。
 てな具合で、最後は支離滅裂、傲岸な居直り、ハチャメチャ論議になりましたが、皆様寒くなりました、どうぞお風邪など召されませんように。今日はこれにて失礼。お後がよろしいようで。チャンチャン♫

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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嗚呼、糞みそ一緒! への2件のフィードバック

  1. 上出勝 のコメント:

    佐々木先生

    私も「介護者同盟」に加えてください。
    母親の認知症が進行して徘徊するようになり、自宅から7キロ離れたところで「発見」されたことがありました。自宅での介護には限界がありグルーぴホームに入ってもらったのですが、合わずに不眠が続き、他にも病気があって今はより看護体制がしっかりしているので、精神病院の認知症病棟に入っています。
    父親は89歳で一人暮らしで、デイサービスと訪問介護で面倒をみてもらっています。帰省すると一緒に食事をするのですが、それだけでとても喜んでくれます。
    そういうわけで、月に2度くらいの割合で帰省しています。田舎なので足がなく、バイクもそのために買いました。楽しみも兼ねてですが(大型バイクの免許とりましたよ!)。

    その田舎(石川県)の知人が『ぽぽぽねっと』というNPO法人をつくって、看護や子育て等の分野で活動しています(私は名前だけの会員です)。その活動のひとつとして「コンチネンスケア」というものの普及活動をしています。快適な排便の環境・技術を普及しようというもので、その知人は「日本コンチネンス協会」の北陸支部長もしています。
    その知人が中心となって、以前谷川俊太郎さんの詩の朗読会を何度か開催しました。多いときは1000人くらい人が集まりました。
    その関係で、谷川さんが協会に詩を書いてくれたとのことです。

      はればれとおおらかに

    赤ちゃんははればれとしっこします
    赤ちゃんはおおらかにうんこします
    赤ちゃんは恥ずかしがらない
    赤ちゃんはなにもおそれない
    赤ちゃんの心にもどってみませんか
    たとえからだは大人でも
    しっこうんこは息をするのと同じ自然なことです
    しっこうんこは、生きる基本です

    曲もついていてYouTubeで聴けます。
    ユーモラスな楽しい唄です。

    ところで、沖縄知事選挙は予想どおりの結果でしたが、私は新知事の「裏切り」を警戒しています。主張としては落選した喜納昌吉さんの「承認撤回」が一番筋が通っていますが、これも予想どおり最下位でした。
    喜納さんが参議院議員をしていたとき、私は喜納さんの顧問弁護士をしていたのですが、政治家には向いていないですね。正直ですから。今の日本で(昔もそうかもしれませんが)正直者は政治家には向きませんね。

    先々週、田舎の友人夫妻と3人で一番星に宿泊し、ボランティアをして来たのですが、佐々木先生宅を訪問しようかと話をしたのですが、なにせ石川県からは車で片道10時間くらいかかり、時間がなくて諦めました。

    それではまた。

  2. アバター画像 fuji-teivo のコメント:

    上出勝さま 
     ご両親のこと初めて知りました。お父様が一人で頑張っておられるとのこと、実に尊敬に値いします。訪問を終えて帰っていく孝行息子の後姿に間違いなく手を合わせていることをお忘れなく。
     全国で一人暮らしのご老人、老老介護のご夫婦、いったいどれだけいるんでしょう。私たち夫婦もその数に入るのですが、せめて国自体がまともだったらいささかの幸福も感じられるのでしょうが、その方はますます変になってきて、介護しなければならない家内がいなければ、もしかして過激な世直し運動をしていたかも。。。いやーそのための体力がもうありませんわ。残念!
     はーい、介護者同盟、も一人加わりました! 

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