今日はシルバー・センターのおじさんたちの通算三日目の作業。いよいよ目隠しの設置。十時のお茶のあと、おじさんの一人と一緒に、六号線沿いにある金物屋さんのスズトヨでビニール板、ついでカインズ・ホームで板を購入。つまりビニール板の色などお客さんに選定してもらった方がいいからというわけである。ところでスズトヨは昔朝日公園側にあった鈴木金物店が六号線に出した店らしい。かなり大きな敷地を持つ専門店だが、それでもこの不景気のため現在は半分をパチンコ屋に貸しているそうだ。
 目隠しの設置と平行して、庭に砂利を入れる作業もあった。軽トラのダンプカーで三杯くらいの砂利を入れ、まるで京都の石庭のような(まさか!)立派な、風情のある庭が出来上がった。予想をはるかに越える出来栄えである。
 しかしもっとも感心したのは、作業のおじさんたちの実に見事な仕事っぷり、楽しそうな仕事の進め方、そして徹底したプロ根性である。そして彼らの技術を根底で支えているもの、結局それは彼らの誠実な人柄であろう。たとえば同じ仕事をどこかの工務店に頼んだとしたら、親方は指図だけ、後は若い者が実際の仕事をして、出来栄えはそれほどでもなくとも、相当のお金を払う、ということにもなりかねない。
 今日はまた屋根瓦の見積もりに来てもらった。昨年お世話になったY工務店の紹介で来たその瓦屋さんのまたなんと朴訥で礼儀正しい職人さんだこと! この町の職人さんたちがこんなにも感じがよく、穏やかで誠実な人たちであることは実に驚異的である。この町で余生を送ることができるのは、実に幸運と言わなければなるまい。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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