午前中、むかし勤めていたS女子大の卒業生だという初めての人から電話があった。今田先生についてであると言い、突然だが彼が六月下旬に亡くなったと言う。よく聞いてみると、彼女はS女子大のスペイン語科ではなく基文科の卒業生で、東洋大学で教える今田教授とだいぶ前から懇意にしており、彼の死をぜひ知らせたくて、同期のスペイン語科卒業生のYさんと連絡をとって私の電話番号を知ったという。それにしてもなぜ私のことを、という質問に、生前、今田教授はS女子大の話になるといつも私のことを話題にしたそうな。当時「毎日」の記者だった彼が、『ドン・キホーテの哲学』を読んで会見を申し込んでくれたときのことである。確か新田次郎の次ぎの回のインタビューであったと思う。初対面なのに意気投合して長い間話し込んだのだ。
 七月に東洋大の教師紹介で見つけた彼のEメールアドレスに伝言を書いても返事が無かった謎もこれで分かった。もし生きていたら、行動家の彼が即座に返事を出さないはずがないからだ。
 それにしても残念でならない。もし生きていたら、これからの互いの人生、だいぶ楽しかったはずなのに。享年六十二歳という。髭が立派だったので年上かなと思っていたが、私より二歳も下だった。ともかく惜しい人をまた亡くした。未亡人にぜひお悔やみをお伝えしたいと思う。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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