どういう風の吹き回しか、もちろん寒くなってきたことが第一の理由だろうが、またミルクたちが二階で寝るようになった。以前愛用した段ボールのベッドに二匹で抱き合って寝ている。捕まえて蚤取りすることができないので、また部屋の中に蚤が増えるかな、と心配していたら、どうも杞憂に終わりそうだ。それにしても分からないのは、今までどうして猫につく蚤があれだけの猛威をふるったのか、ということである。今でも、ミルクの背中を櫛で梳くと、たちどころに五、六匹は捕まると思うが、部屋の中に落ちるというのではなく、おそらくは背中にしがみついているのであろう。もう少し猫たちが警戒しなくなったら、ぜひとも蚤退治のスプレーをかけてやりたいのだが。
 ところで、下の縁側の猫の出入り口で、どうして猫のくせにするりと入ってこないのだろう、と不思議に思っていたのだが、よく見てみると理由は簡単だった。つまり外から入る際、背伸びしてやっとの位置に入口があるので、するりと抜けるわけには行かなかったのだ。だから今日の午後、古材を利用して、外に台を作ってやった。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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