魔女の一撃

一瞬目の前が真っ暗になった。まず感じたのは悔しさである。やってしまった!しかし油断していたわけでも、無理したわけでもないのが、逆に(?)悔しい。
 十年かぶりのギックリ腰である。今までも腰が痛いということはしょっちゅう経験してきたが、正真正銘のギックリ腰は十数年ぶりである。いわゆる「魔女の一撃」。
 昼前、先日買ってきた玉砂利四袋を車の後ろ(あれ何て言うんだっけ?そうだトランク)から出して、美子と一緒に庭に撒こうとしたのである。つまり先日シルバーのおじさんたちがきれいに敷いてくれた砂利を家の横手などに少し移し、その代わり五色の玉砂利(15キロ入り一袋390円)を濡れ縁の直ぐ下に撒こうと思いついたのである。バケツに少しだけ砂利を入れて西手に運び、地面に撒こうと中腰になったとたん、ギクッと腰に激痛が走り、動けなくなったのだ。しまった!!!
 幸い側に妻がいたので、彼女の肩につかまってゆっくり家の中に入った。痛みは静かにしているぶんには感じないが、立つことも歩くことむもできず、かといってベッドに横になってしまうと起き上がるのが大変という状態。
 午後二時から小高でやるはずだった「島尾敏雄を読む会」の延期を寺田君に電話で依頼。
 このところ物忘れでへまばかりしている美子が一念発起して夫のために頑張るいい契機になるかも知れない。それにしても惨めであることには変わりがない。最低三日間は静かにしなければならない。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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