今日はいつもより変化のある一日だった。まず午後から小高浮舟会館の「島尾敏雄を読む会」に行った。先月はギックリ腰で休んだので、二月ぶりの読書会である。「いなかぶり」をテキストに、今日も参加者からいろいろな話が出て楽しかった。昭和十年代では、お歯黒もあったし、学校に石版や蝋石を持っていったことなど、作品に描かれたことを現実に体験した人もいて、ひとしきり昔話に花が咲いた。島尾の小説に触発されて、自分の過去を振り返るいい機会になっているようだ。
 夕方からは、例の同級生三組の夫婦たちの会食だったが、今日は珍しい飛び入りがあった。八月末から町の英語塾で教えている27歳のアメリカ青年M. F君である。話を聞いてみると、日本に来る前に、チリやメキシコに滞在した経験があり、非常に癖の無いきれいなスペイン語を話すのでびっくりした。日本語があまりできないこともあって、結局私とスペイン語で話すことが多かった。テキサスはオースティンの出身で、一年間の日本滞在の後、アメリカに帰ってさらに勉強を続けたいらしい。フィアンセが故郷で待っているとも言っていた。
 ともかく非常な好青年で、こんなアメリカ人青年もいるのかと思うほど純粋で真面目な若者である。たとえば平和や文化の違いについて実に深い考え方を持っている。9月11日以降の故国の動向に心痛めているようでほっとした。
 また一人若い友だちができて嬉しい。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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