昨夜、S市に住む兄から電話があり、車の買い替えのために(確かそう言ったと思うが)必要なので、戸籍謄本の付票をとって郵送してくれないかと頼まれた。日中そのことをすっかり忘れていて、四時ごろ、急に思い出して急いで市役所に行く。こういう用はいつまでたっても慣れない。案の定、兄は独身だからバッパさんの戸籍に入っているらしく、すると私の現在の本籍地は東京になっているので、持っていった印鑑一つでは足りないらしい。でもその受付け嬢は、拇印でも結構です、と親切に教えてくれた。近ごろ、民間よりもこうした公的機関の方が柔らかな応対をしてくれるので助かる。本当はこうでなくてはならないのだが。
付票を待っているあいだ、ふと思い出した。ここの収入役はたしかS君でなかっただろうか。そうだ、いい機会だから寄ってみよう。
S 君は小学六年の時の友人で、あのころ毎日のように一緒に遊びまわったものだ。I修道会から還俗してこの町に戻ってきたときも、何回か一緒に呑んだ記憶がある。彼には『途上』の「火の見の塔」に登場してもらったこともある。とつぜん訪れた私の顔を見て、一瞬分からなかったようだが、すぐに私を認めて喜んで歓迎してくれた。この町でもう一人旧友と再会できて、今日はいい一日だった。そのうち機会を作ってぜひ呑みましょうと約束して帰ってきた。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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