むかし勤めていた大学がセクハラ裁判で大揺れに揺れているそうだ。発端のセクハラ非常勤講師も、それを大学側に告げた別の非常勤講師も、それをでっち上げだと「暴言」をはいた教授も、もちろん大学側の偉い人たちも、幸か不幸か私自身みんな知っている。せっかくの「ご報告」をでっちあげだと言われ「名誉を傷つけられた」と訴えた非常勤講師は、一審で敗訴したが、驚くべき粘り腰で今回、東京高裁の控訴審で勝訴した。詳しく過程を追っていたわけではないので、軽はずみなことは言えないが、しかし他人事ながら後味が悪い事件だ。発端の教師を知っているが、風采の上がらなぬ(別段セクハラに風采は関係ないが)男で、けしからぬ行為に及んだわけではなく、教員免許を獲得するには自分の推薦が必要だと、学生たちを喫茶店に呼び出して「お茶した」くらいだと聞いている。なんともみみっちい話で、そんな話におめおめ乗っかっていった学生も学生である。逆にこのQP男(禿頭で幼児体型だからだが)の横っ面をひっぱたくような学生がいなかったのは残念至極としか言い様がない。
だから同性として(つまり「別の非常勤講師」も「暴言教授」も女性である)そんなつまらぬことを騒ぎ立てるの愚をなじった教授の気持ちが分からぬでもない。実際、昨今このセクハラ問題で、多くの大学が愚劣きわまりない狂想曲を奏でている。「別の非常勤講師」は昔からうぬぼれの強い、自分を売り出すことにかけてはえげつないほどの女で、教授は同性として腹に据えかねたのであろう。だが結局いちばん悪いのは、責任逃れに汲々として、騒ぎを大きくしてしまった大学当局である。その無責任構造のことなら、私自身目をつぶってでもまざまざとなぞることができる。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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