先日、三組の夫婦の恒例の夕食会で、I君に「君はよく問題にぶつかるね」と皮肉交じりに言われた。好き好んで問題を見つけようとしているわけではないのだが、じっさいよく問題にぶつかる。見過ごしたほうが千倍楽なのだが、そして別段「世直し」など考えてもいないのだが……
私学共済の保険証の有効期限が今日で切れるので、市役所に電話する。国民健保に切り替えたいのですが、手続きには何が必要ですか、と。すると電話の向こうで感じのいい若い男の声が「共済の資格喪失証明書と印鑑を用意していただければ充分です」。
さて市民課で手続きしようとしたら、係りの若い女性が言う、「あのー年金証書をお持ちですか」。「えっ、電話では証明書と印鑑だけでいいと……」「すみません、でも証書が必要なんです」「……」
家に証書を取りに戻って、また窓口に立つ。新しい用紙を渡され、それに書き込んで提出する。交付を待つうち、だんだん腹が立ってくる。簡単な手続きのはずが、結局一時間半かかっている。名前を呼ばれるころには、この瞬間湯沸器はもう完全に沸点に達している。
「あのねー、もう少しプロらしい仕事してもらえない?にこにこ笑顔をふりまくことだけがサービスとちがいまっせ。電話で問い合わせがあったとき、手元に簡単なマニュアル用意しておけば、かんたーんなことなのよ。切り替えですか、それなら何と何、そして場合によっては何が必要になるかも知れませんから、念のため何も持ってきてください。これだけのことよ。そうしたらまた出直して来ることなど必要ないのよ。あんたがた連絡会のようなものやるんでしょ。そこで必ずこうしたクレームがあったこと議題にしてくださいね。ほんともう頼みますよ」
なんだか自分があの文句顔の杉村春子になったような気色悪ーい気分で、このところ急速に春めいてきた市庁舎の庭を横切って車までたどり着く。あーしんど。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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