自己責任?

〈パウエル長官は国務省での記者会見や一部メディアとのインタビューで「小泉首相もベルルスコーニ伊首相も、テロに屈してはいけない、テロリストの手に自分たちの運命を委ねてはいけない、ということを十分に理解している」と述べ、誘拐犯が要求したイラクからの部隊撤退に応じなかった両首脳を評価した。 と同時に、「誰も危険を冒さなければ、私たちは前進しない。より良い目的のため危険を冒した日本人がいたことを私はうれしく思う」と述べ、三人の自己責任を問う声に反論。「危険を冒した市民がいることを、承知でイラクに派遣された兵士がいることを、日本の人々は誇りに思うべきだ」と述べた。 (04/16 10:42) 〉(「アサヒ・コム」より)。

 案の定、愚かな議論が始まった。救出された三人(のうちの誰か?)が、今後も続けてイラクに残って働きたいと希望しているとの情報を得て、閣僚の中には今回救出にかかった全費用を計算して一部を本人たちに払わせろ、と言う者までいるそうだ。家族が絶対反対と言うのは分からないでもない。また、本人たちがたとえ内心そうした信念を持っていたとしても、とりあえずは口をつぐんでいた方がよかったのかも知れない。しかしこんなに金をかけたのに、などとにわか成金の馬鹿親のような言葉を平然と吐くような閣僚がいる日本政府とは、またなんと品位のない政府だこと。
 そんな意味で、アメリカのパウエルさんの方が、悔しいけど、はるかに政治家としても人間としても格が上である。国家と個人との間の微妙なバランス感覚が欠如している政治家の、そして国民のなんと貧相なこと。今回かかった費用など、自衛隊派遣のためにかかった巨額の無駄金に比べたら、ほんま屁みたいなもんでっせ。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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