英語弁論大会(二)

「読売新聞」福島版 昭和33年11月16日(日曜日)


三、四位を獲得
全日本中学校英語弁論 三本木、加藤さん

 十五日東京有楽町の読売ホールで行われたザ・ヨミウリ、日本学生協会主催の第十回全日本中学校英語弁論大会に、本県からは桜の聖母女学院中三年、三本木美子さん(十四)とザベリオ学園中二年加藤道義君(十四)の二人が三位と四位を獲得、三本木さんは日本学生協会杯を鈴木同協会長から、加藤君は読売新聞社杯を高橋同社副社長からそれぞれ授与された。
 二人とも十四日の地区予選を経てこの日の決勝大会に進んだだけに、壇上での弁舌にもよどみがなく、外人の聴衆も感心するほど。とくに加藤君は二年生の出場者でただ一人の入賞者となったが、二人とも「こんな上位に入賞できるとは思わなかった。これからも一生懸命勉強したい」と入賞のうれしさをかくしきれない表情であった。
 なお二人は表彰式後、東京会館で開かれたレセプションに出席したが、三位に入賞した三本木さんは高松宮、同妃殿下の前で記念スピーチを行なった。

 義父が作ったこのスクラップ帳には、大会で発表したときの原稿が挟んである。二年生のときの原稿は、“Important Things”、そして三年生のときの原稿は、“Give Your Dog a Born” である。
 美子と英語の付き合いはほんの最近まで続いた。大学は英文科、卒業後すぐ勤めた桜の聖母学院の高校で英語の教師、結婚後は用賀の清泉インターナショナル・スクールで司書を、そして最後は八王子の純心女子学園高校で英語の講師だった(用賀と八王子の間の五年間は専業主婦だった)。勤めから開放されて自由になった今、本当は嫁や孫に英語を教えたかっただろうにと思うとかわいそうな気がする。
 今日はその孫の二歳の誕生日、昼食時の心ばかりのパーティーにはバッパさんにも来てもらった。食事前、先日いわきの姉が送ってくれた着物を着せてみた。おそらく姉には、美子おあばちゃんの代わりをするという気持ちがあるのだろう。そう考えると、孫娘に何もしてやれない美子が不憫でならない。彼女の “過去の栄光” を記録しようという気になったのも、そんな心の動きのせいだろう。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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