「こんな東北の片田舎にも容赦なく猛暑が襲っていましたが、今日の午後あたり、心なしかその勢いが少し弱まったように感じられます。」
何通か残暑見舞いへのお返事にそう書いたが、それにしても長い猛暑のトンネルだった。二階縁側のクーラー(エアコンではない)が無かったら、ほんとうにこの老夫婦、間違いなく熱中症で倒れていたに違いない。
そんな初秋への予兆の中、今日の午後は、いつもとは違った時間を過ごした。静岡からSご夫妻が小高の「埴谷・島尾記念文学資料館」に来られたので、美子と一緒に(言うまでもないが)会いに行ったのだ。手紙やメールでのやり取りはあったが、お会いするのは初めてである。東京のO大学で教鞭をとりながら、個人誌を発行し、そこに小川国夫伝を連載されてきた方である。その執筆の過程で、一度相馬を訪ねたいと、今回の来訪となったのである。
浮舟文化会館の一室で、担当者のTさんを交え、しばらく話し合ったあと、資料館見学や埴谷・島尾ゆかりの地歴訪は明日Tさんがやってくださるというので、今日は私が少し当地をご案内しましょう、ということになった。野馬追祭場、馬事公苑、そして北泉海浜公園へと車を走らせた。
山と海に囲まれたわが町の一筆書きのような案内だったが、喜んでいただいたようだ。帰りぎわには道の駅により、数日後にはお会いするという小川夫人に軽いお土産を購入してS氏に言付けた。ご夫妻が予約したホテルはわが家から近い扇屋旅館なので、チェックインする前に、わが家に寄って粗茶を差し上げた。その後ホテルにお送りして、にわかガイドの大役をなんとかを果たせたようだ。
九日後には、最後の勤務校の元同僚三人が、やはり一泊予定で訪ねてくる。彼らのときも、今日のコースを走ってみようかな、などと俄然ガイド意識が出てきた。
今までも時おりの来客はあったが、それについて書くことは控えてきた。今日の場合は、自分でも驚くほどガイドの仕事が楽しかったので例外的に報告とあいなった。そんなことわりわざわざ書くまでもないか。