かくて世は事も無し(?)

ふだんめったなことではいわゆネットサーフインなどやらないが(そんな時間も無いし)、先日発売された拙著のスペイン語版の情報を得たくて、ネットで検索してみた。すると出てきましたよサラゴサの書籍市の記事が、そして今年の目玉の一つとしてサトリ出版のブースの大きな写真が、しかも店頭に並べられた何冊かの本の中にエバさんデザインの表紙をつけた我が『原発禍を生きる』のスペイン語版、そして店先で客と応対しているのは、そう間違いなくマリアンさんです。
 さてそのエバさんですが(前にご紹介したかと思いますが、佐藤るみさんに続いて在スペイン富士貞房計画(?)の同志になった人です)は、彼女と仕事上付き合いのある報道機関に片っ端から拙著の宣伝文を送りつけているそうです。そして昨日のメールで例の「私たちの秘密の計画」はどう進んでます、と聞いてきたので、おおむね次のようなことを知らせました。

 もしも今度の本が好評裡に迎えられて、読者の中にその続きを読みたいという気運が感じられるなら(?)、第二弾として、既に私家本として出ている『モノディアロゴスⅥ~Ⅷ』から適当な文章を選んで『フクシマ 続けて災禍を生きる』を翻訳編集しては? もちろん表紙から本文挿絵までエバさんに存分に健筆を揮ってもらいます。さて第三弾のタイトルは何でしょう? 『フクシマ まだ続けて生きている』では? これ半分冗談ですが、何か魅力的な書名を考えましょうね。つまり第一弾が出たこれら三冊はトリロジー(三部作)というわけです。そしてこれから出そうとする二つの本の付録に、既に書いたエッセイ、たとえば「ウナムーノと漱石 伝統と近代のはざまに立つ二人の作家」や短編、たとえば「ビーベスの妹」などを収録する。どう思います、この計画? ともかくこれから同志三人、いろいろ楽しい計画を練っていきましょう。

 そんな楽しい計画の話の後に、残念というか腹立たしいことも書かなければならない。というのは、先のネット・サーフィンにはとんでもない続きがあったわけだ。つまりスペイン語で「フクシマ 原発禍」で検索して出たきた様々な情報の中に、たしか南米のチリで、東大のNakagawaという教授の講演を報じた「フクシマにはあと百年戻れない!」などというショッキングな記事があり、記者の一人が「フクシマに行くことは出来るんですか?」ときくと、そのナカガワ教授は「滞在は出来ませんが通り過ぎるくらいならいいでしょう」と答えているのだ。海外でとんでもないガセネタをいけしゃーしゃーとばら撒いてる奴がいるわけだ。これ、右翼の言い草借りると「コクゾク」ですぞ。
 「コクゾク」と言えば、また一つ嫌なニュースに触れないわけにはいきません。それは今夕、ネット版「朝日」で流された次のようなニュースである。

  
   原発は重要」日仏首脳会談、共同開発・輸出協力を確認

 安倍晋三首相は7日、オランド仏大統領と首相官邸で会談した。両首脳は「原子力発電が重要」との認識で一致し、日本での核燃料サイクルや、原発の共同開発・輸出の推進について協力を確認。武器輸出三原則の緩和をふまえた武器の共同開発でも合意し、会談後にこれらを盛り込んだ共同声明を発表した。 両首脳は会談冒頭に「パートナーシップ強化」を表明。共同声明では原発について、東京電力福島第一原発の事故もふまえて「安全性の強化が優先課題であることを共有し、原子力規制当局間の協力を拡大」と言及しつつも、仏と協力して再稼働や輸出を重視する安倍政権の姿勢を強調した。 使用済み核燃料を処理して再び使えるようにする核燃料サイクルに関し、青森県の再処理工場の「安全で安定的な操業の開始」で一致。会談後に、日本原燃が10月の完成を目指す工場の稼働に仏アレバ社が協力する覚書が交わされた。

 フクシマ・ダイイチの事故がまだ収束もしてないのに、原発の輸出? ザケンジャナイ!!! あきれ果てて、というよりこちとら怒りのため憤死寸前ですぞ。度胸も無いくせに口から次々調子のいいことばかり言ってると思って油断してたら、といって対インド交渉でもきな臭いことを言ってたと思ったら、あの舌足らずの甘い口調でぬけぬけと、正しく解釈すれば核不拡散条約や武器輸出三原則にも十分抵触する重要事項を、国民や報道機関がアホであることをいいことに、次々と決めてる。みんな、どう思ってる?
 いやさ、いつもの通り孫たちと夕餉の食卓を囲み、食後に孫娘とバブセとかなんとか不思議な名前をつけられた熊のぬいぐるみと遊んではみたが、胸中煮え返るような怒りが溜まっている。「君、それ考えすぎ」、とおっしゃる? えっ、あんたそう思ってんの? それ甘すぎない? こうして日本は次々と危険な傾斜にはまっていってるのが分かんないの?
 テレビでは何ごともなかったように馬鹿―な番組が目白押し。ここ南相馬の夜も静かに、穏やかに過ぎていきます。でも、これって本当はうーんと異常な事態なんすよ。どうしてそれが分かんないのかなー
 今度の参院選で現政権を大敗に追い込まなければ、ほんと、愛するこの日本は滅びの道をまっしぐらですぞ。おのおの方油断召さるな! 聞こえません? 誰かが闇の中で必死に叫んでますよ。

        タスケテクレーーーーッ!!!

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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かくて世は事も無し(?) への1件のコメント

  1. 阿部修義 のコメント:

     人間にとって幸せな人生とは何なのかと、ふと、考えていました。人間はいつかはこの世を去るわけで、死ぬための準備が人生とも言えるんじゃないでしょうか。そう考えると魂の平安ということが重要な意味があるように私は思いました。自分のことばかり考えていると物質的な豊かさは実感できるかも知れませんが、心はそれを奪われまいと騒がしいんじゃないでしょうか。魂の平安には利他的な心を持つことが何より大切なように思います。先生が「生きる覚悟」で紹介された富岡町の男の人をネットで検索していたら2012年3月9日日本外国特派員協会でこんなことを言われていました。

     「私は、東京電力と政府は40年前に原発は近い将来に大爆発すると思って造ったと思うんですよ。それが嘘なら普通、電線を引くコストのない東京湾に造りますよ。関東がやられるとダメ、福島なら人口も少ないし、いいかと思ったのですよ。最初から前提は、原発は爆発するということです」。

     原発賛成の人は東京湾に原発を造ることも賛成しての賛成なんでしょうか。ここは非常に大切です。東京湾は困るけど原発は賛成という人が賛成派の大半じゃないかと私は思います。

     鄭氏が「こころの時代」の中で言われた通り原発の存在それ自体が人間にとって不安なことなんです。人間の幸せの意味を深く考えると、魂の平安が最上のものであり、物質的な豊かさは枝葉末節なことだと私は思います。生の終着駅に死があることを考えれば原発より魂の平安を私たちは選ぶべきだと思います。

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