嬉しい話のてんこ盛り(その二)

ご報告したいことがいくつか溜まってしまったので、この際一挙に書かせてもらいます。
 最初は、ご心配いただいている皮膚炎のことですが、もしかすると少し快方に向かっているのかも知れません。両腕などにあった赤みを帯び、凸凹に盛り上がった皮膚が、今は健康な皮膚のように見えます。しかし痒みは一向に消えません。つまりかゆみは皮膚の内部から湧き上がってきます。だから塗り薬などはかなり前から一切付けてませんし、体質改善以外の道はないわけでしょう。そのため乳酸菌入りの錠剤など三社ほどの商品を毎日飲んでいますが、その効果が表れるまでは相当の時間がかかりそうです。
 掻かないで我慢などするとストレスが溜まるので、指の爪を短く、そして丸く研いで一生懸命掻いてます。下手をすると何時間も掻いていることがあり、時には楽しみにさえなってます。いつか健康な肌になって掻かなくてもいい時が来ても,このささやかな楽しみを懐かしく思うかも知れません(ウソですよ!そんな変態じゃない!)。
 こんな悪戦苦闘にも思いがけない副産物がありました。つまり84キロもあった体重(ありすぎです)が、ここ数か月のあいだに70キロまで落ちたことです。痒みのためもあって食欲減退、さらに肉類などほとんど食べないので、意図しないままに小食になったせいでしょう。他にどこか不具合があれば心配ですが、今のところそれはありません。先日美子の往診に見えられた石原医師によれば、そのうち精密な検査をするけど見たところ問題はなさそうだということでした。
 すみませんね、面白くもない皮膚炎の話などして.これからは楽しい話ですのでご安心ください。
 先ず最初は、先日阿部修義さんからのメールで知ったのですが、あのモノディアロゴス君が11月4日の京都競馬で一着になったそうです。競走馬のピークが何歳なのか知りませんが、彼はまだ2歳。馬主の野嶋さんの話では、いつかドーハのレースに出したいそうですが、もしかするとその夢が現実となり、我らのモノディアロゴス君、世界的な名馬になるかも知れません。期待しましょう。
 続いてはそれよりもっともっと嬉しい話です。先だっては韓国版『原発禍を生きる』が金浦市に住むヨセフ金永泰さんという得難い友人を見つけてくれ、政治家たちの愚かな駆け引きとは全く関係のない、真の民間外交の切っ掛けを作ってくれましたが、今度はそのスペイン語版が素晴らしい友人を探し出してくれたのです。現在はアフリカ西端のベルデ岬に住む作家ホアキン・カンポスさん(Joaquín Campos)です。先日とつぜん彼からメールが届き、以来、仲の良い恋人並み(?)の頻度でアフリカと日本の間をメールが飛びかっています。
 恋人並みなどと下手な比喩を使ったが、彼は44歳、脂の乗り切った作家で、しかも高級ホテルのシェフでもあるという珍しい人である。既に7冊も著作を世に問い、今さらに一冊準備中とのこと。
 その彼が言うには、既にJさんが訳し終えて出版社を探している私の作品集を、これまで彼の本を何冊か出してくれた出版社に掛け合って是非出版したいという嬉しい申し出。私に異論があろうはずもない。私も御礼に、彼のその新著を訳して、先ずは呑空庵から、そして折をみて出版社を探しましょう、と伝えたときの彼の喜びようは文面からも伝わってきた。
 いや、彼の話はさらに具体的になって、その出版社のあるセビリヤに直接出向き出版のことを掛け合うつもりだと言う。そしてその節は、私の教え子のいるカルメル会修道院も訪ねたいと。
 この話はさらに広がる。つまり現在付き合っている中国人の彼女と、来年の九月、バルセローナで結婚するつもり。その足で新婚旅行もかねて南相馬の私に逢うためだけに日本に行きたいとまでおっしゃる。となると、頴美の友達が新しくできることにもなる。
 彼はマラガ生まれで長らくアジア、特に中国とカンボジアで生活体験した後作家になったのだが、彼の一番あこがれている国は日本、そして生涯の最後は北海道の東端・根室で生活したいとまで思い詰めている。その彼が、私へのメールを書きながら読んでいる本が上島鬼貫のスペイン語訳ときた。なに鬼貫? 知らなかった。あの芭蕉と並び称される俳諧の巨匠なのだ。知らなかった! それで大急ぎでアマゾンに一巻本全集を注文した。それにしても鬼貫の俳句集の翻訳を出しているのは世界広しといえどスペインだけでしょう。恐るべきスペイン。
 彼についてもっと書きたいけど疲れました。またの機会にしましょう。

※今朝の追記
 もう一つ嬉しいことがあります。今日12月8日は美子の75回目の誕生日です。話すことはできませんが、穏やかな顔でいつも私に力を与えてくれます。少なくとも(?)あと10年、二人で元気に生きてみせます。応援よろしく願います。

【息子追記】父がこの投稿をしたのは12月8日に日付の替わる8分前。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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嬉しい話のてんこ盛り(その二) への5件のフィードバック

  1. 阿部修義 のコメント:

    美子奥様

     お誕生日おめでとうございます!  2018年12月8日

     先生のお顔が随分スリムになられたのではと「美子、金婚おめでとう!」の下段にあった最近の先生のお写真を拝見して思っておりましたが、10キロ以上痩せられたんですね。あまりに短期間なので少し心配はしていますが、血液検査で数値に異常がなければ問題ありません。先生が今まで地道になされてきたことが、広く世界に向かって浸透されているんだと金さんやカンポスさんとの親密な交流からも窺えます。上島鬼貫(うえしま おにつら)私も初めて聞きました。美子奥様のご健康を心よりお祈り申し上げます。

  2. アバター画像 fuji-teivo のコメント:

    阿部修義様
     いま起きがけに追記を書いて、ふと談話室を見ましたら、阿部さんからの祝辞が既にありました。心より感謝申し上げます。

  3. 守口 のコメント:

    佐々木兄殿
    美子奥さまのお誕生日、誠におめでとうございます。
    この間お送りくださった孫の愛さんの写真を拝見しますと、美子おばあさまによく似てきておられて、びっくりです。これなら、兄殿もお寂しくないのではないかとさえ思うほどです。
    追記)私は時々馬に乗ることはありますが、モノディアロゴスの馬の話は知りません。
    競走馬の話は私ではないのでは・・・?

  4. アバター画像 fuji-teivo のコメント:

    守口さん
     勘違いでした。正しくは阿部修義さんから、しかも日にちは11月4日でした。お騒がせしました、すんまそん。さっそく訂正しておきました。
     

  5. 佐々木あずさ のコメント:

    呑空庵主 孝先生
    すっかりご無沙汰しておりました。巷の、愚かな独裁政治のおかげでてんやわんやの毎日です。メールをいただきながら、今度と思っているうちに、もう十勝は真冬です。今日、先生からのメールを頂戴し、私の筆不精に恥じ入っております。とにかく、素敵な方たちを結び付けておられる先生、私たちのお尻をポンポン叩いてくださいませ。モノディアロゴス君のように、ちょっとは踏ん張ってみますから。
    ばっぱ様が先生に献上したキビ団子を送ります。どうぞ養生、ご自愛いただきますようお願いいたします。
    北海道十勝 不肖の弟子 寄りあい処呑空庵 佐々木あずさ

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