『男はつらいよ』の二本(「浪花の恋の寅次郎」と「寅次郎恋愛塾」)と『デスティニー 愛は果てしなく』の入ったカセットテープが動かなくなった。出して調べてみると、どうも途中でテープが切れているらしい。カセットの下蓋を上にして、五本のねじを外す。注意深く下蓋を開ける。
最初、ここで間違った。つまりねじを外したら、次にカセット全体をもう一度表に返さなければならなかったのだ。最初のときはそうしなかったので、下蓋を外す際、小さなアルミニウムの円筒(テープな回転を滑らかにするための)が外れて、さてそれがどこにあったものなのかが分からなくなって失敗した。
ところで切れたテープを繋ぐ作業だが、これには普通の透明なテープより少し白濁したメンディング・テープの方がいい。つまり時間が経っても乾燥して剥がれることがないからである。今回のテープも、切れた場所は以前一度切れて普通のテープで補修した箇所だった。たぶん十年前に修繕したのだろう。そのときも下蓋を上にした状態で外して失敗したことをやっと思い出した。普通のカセット・テープ(つまり音楽などを録音するための小型のテープ)のときも同じ手順で箱を開けなければならない。
話をもとに戻すと、カセットを裏返して、五本のねじを外したら、こんどはそれを表に返してから上蓋を外すというやり方を教えてくれたのは「ウィキペディア」である。つまりそこの「VHS」を検索し、画面が出たら中ごろあたりに「規格一覧」があり、その右横に「テープ構造」の小さな写真が出る。それをクリックで拡大すると、上蓋を開けた状態がはっきり分かる。先ほどの小さな円筒がどこに来なければならないか、これで確認できたわけである。
壊れたカセットなど「燃えないゴミ」として棄てたっていいようなものだが、苦労しいしい壊れ物を直すことそれ自体に幾ばくかの充実感がある。テープなど惜しくはないが、そうしたささやかな充実感をおめおめ無駄にするのはそれこそもったいない。だぼだぼと締りのない日常にいささかの緊張感をもたらすのも、そんなささやかなこだわりの意味である。昔風の(?)ご老体が、丹精こめて盆栽の世話をするのと同じこと(やっぱ、そうとう暇なんだなー)。
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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