小学五年生の秋に北海道(帯広市)から相馬に移り住んだので、私の相馬弁は生粋のそれではなく、あくまで学習したものである。といって今では生粋の相馬弁などというものは存在しないのかも知れない。確か地元のインターネット上に「相馬弁保存会」とか「研究会」のようなものを見かけたことがあるので、そのうち探索してみよう。
そうした本物の方言以外にもそれぞれの家庭や集団特有の、方言というより隠語に近いものもある。たとえば、「あんにゃげー」である。
隣りの小高町 [現在の小高区] に母方の親戚がかたまって住んでいる集落がある。そこに母の従兄のSさんがいた(亡くなられてからかなりの月日が経つ)。たくさんの面白いエピソードの持ち主で、あるとき葬式に出かけようとして、家の人に厳重に注意された。「えーが、向こうさ行ったら決して笑うなよ」。思えばこの人に随分と意地の悪い注意をしたものだ。案の定、Sさんは葬式のあいだその忠告を思い出してどうにも可笑しくなってきた。腿をつねったり仏様の生前の真面目な顔を思い出そうとすればするほど、苦しいまでに可笑しさがこみ上げてきて、とうとう押入れの中に逃げ込んだなどの失敗話。
このSさんが子供のとき、あんにゃ(兄のこと、ちなみに姉はあんちゃ)といっしょにお呼ばれして、さんざっぱらじんだ餅 [ずんだ餅と発音される。仙台を中心に食べられる青豆をつぶした餡を絡めた餅] を食わされた。そこであんにゃのわき腹をつついて言ったそうな。「あんにゃ、げーだ」。いつからか我が家でも、おなかが一杯のときに「あんにゃげーだ」と言うようになった。
(2002/7/13)
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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